施設側も現場側も知っておきたい「介護と腰痛に関するデータ」

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メカニズム

以前の記事、厚生労働省の資料で見る「介護と事故」では、労働災害について説明させて頂きました。
今回の記事も労働災害についてなのですが、労働災害という枠では収まりきれない「介護と腰痛」についてを説明させていただきます。

介護は肉体労働であり、多くの介護士は腰痛を抱えています。
家族などからすると、「ベッドから車いすに乗せる時だけ」と簡単に考えがちで、腰を使うのは一時に思えるかもしれませんが、介護ではそれを幾度となく繰り返します。
慢性的にもなると、少しかがんだ体勢をするだけでも負担が蓄積していくものです。

ましてや、身を預けてくれない利用者や、暴れるような利用者、ものすごい重たい利用者は介護士を退職に追い込むことさえあるのです。
介護士の腰痛が労働災害とされれば、施設側は安全配慮義務を怠ったとされ、現場側は損害賠償も請求できることもあるので、たかが腰痛では済まされない介護事業所が抱える大きな問題なのです。

今回の記事では、厚生労働省の資料をもとに腰痛に関してをまとめてみました。

労働災害による腰痛

以下の表からもわかるように、労働災害による腰痛の発生状況は年々増加傾向にあります。
ここでの腰痛の件数とは、災害性腰痛と慢性腰痛の件数を合わせたものになります。

労働災害

【参考:厚生労働省 社会福祉・介護事業における労働災害

腰痛と介護の関係

ここからは平成21年の少し前の資料になりますが、業務上疾病の発生件数は7,491 件のうち、腰痛は4,870件と6割以上を占め、介護業務を含む保健衛生業は全体の約24%を占めていました。
そして、保健衛生業の中でも社会福祉施設での腰痛発生は圧倒的に高いのです。

社会福祉施設と腰痛

【参考:厚生労働省 社会福祉施設の労働災害防止

腰痛による休業

腰痛が発生した場合の休業見込み日数については、29日以上が3割以上を占め、15日以上の休業見込みが、約半数となっています。

休業見込み

【参考:厚生労働省 介護業務で働く人のための腰痛予防

対象・動作別腰痛発生割合

対象・動作別発生割合では、人が8割以上を占めており、介護現場における作業内容を反映しています。

対象

【参考:厚生労働省 介護業務で働く人のための腰痛予防

腰痛発生状況における「4つの特徴」

厚生労働省の資料より、腰痛の特徴をまとめてみると4つの特徴があります。

  1. 月曜日に多く発生
  2. 9~11時台に多く発生
  3. 29歳未満の若い世代での発生率が高い
  4. 経験年数3年未満の被災者が全体の54%

発生状況

時間帯・年齢別
【参考:厚生労働省 社会福祉・介護事業における労働災害

腰痛対策

腰痛は介護者本人が気をつけることが最も大切ですが、施設側のサポートがなければ、リスクを減らすことは当然できません。

介護者ができる対策

日々心がけたいのは、腰痛防止のストレッチです。
この中の全てをしているわけではありませんが、私も毎日、仕事前に欠かさずやっています。
面倒にも思えますが、体を柔らかくすることで腰痛の悪化が未然に防げるというのは手に取るようにわかるものですよ。

ストレッチ

【参考:厚生労働省 社会福祉施設の労働災害防止

効果的なストレッチ 8つのポイント

ストレッチングには、反動や動きを伴う「動的ストレッチング」もありますが、腰痛予防体操 としては、筋肉を伸ばした状態で静止する「静的なストレッチング」が、筋肉への負担が少なく、安全に筋疲労回復、 柔軟性、リラクセーションを高めることができるため、推奨されています。

  1. 効果的な静的ストレッチングを行うポイントは、
  2. 息を止めずにゆっくりと吐きながら伸ばしていく
  3. 反動・はずみはつけない
  4. 伸ばす筋肉を意識する
  5. 張りを感じるが痛みのない程度まで伸ばす
  6. 20秒から30秒伸ばし続ける
  7. 筋肉を戻すときはゆっくりとじわじわ戻っていることを意識する
  8. 一度のストレッチングで1回から3回ほど伸ばす
簡単な腰痛対策

そして、もっとも簡単な腰痛防止策としてオススメなのが、以下のようにベッドに足を乗せ利用者との距離を近づけることです。

片膝

【参考:厚生労働省 社会福祉施設の労働災害防止

施設側ができる対策

施設側ができる対策としては、福祉機器や補助具等の利用が最も簡単でオススメです。
ここでは、厚生労働省の資料をもとにいくつかの例を挙げさせていただきます。

様々な介助方法
【参考:厚生労働省 介護業務で働く人のための腰痛予防

労働災害の発生と企業の責任

腰痛になったのは「介護士本人が気をつけなかったから」なんて思ってはいけません。
当然、腰痛だとしても「労働災害」として認定されれば、使用者は安全配慮義務を怠ったとして責任・義務を負うこととなります。

労働災害の発生と企業の責任について簡単にまとめると、以下の図のようになります。

刑事上の責任 安全配慮義務

【参考:厚生労働省 介護業務で働く人のための腰痛予防

まとめ

重たい利用者も、軽い利用者も、要求の多い利用者も、要求の少ない利用者も平等に介護しなければならないのは、やはり腑に落ちないというのが現場の意見だとは思いますが、施設側が現場に対して配慮をすることでいくつもの介護負担を軽減することはできるはずです。

施設側のまとめ

介護事業運営の厳しい昨今、現場の介護士の腰痛や疲れを気にしつつも、新たな機器の導入はそう簡単には行えないかもしれませんが、「介護士あっての介護」ということは忘れてはいけません。

現場に気を使えるか、気を使えないかということは、施設側と現場側の溝の表れであり、客観的に現場を管理することも施設側の重要な仕事です。

施設側はその責任として、せめて以下の3つのことは行うべきではないでしょうか?

  • 作業の実施体制
  • 作業環境管理
  • 健康管理

私の働いていた施設では、好きなカップを入れると一杯分のコーヒーが注がれるといった配慮がありましたが、それだけでも幸せに思えてくるものです。
今後の運営を慎重に考えていくのならば、現場に思いを届けることが大切になってくるのではないでしょうか?

現場側のまとめ

やはり、面倒に思えることかもしれませんが、就労前には簡単でもストレッチを行うことが自分の身を守るためにはとても重要なことです。
それでも面倒と思えるのなら考えを変えてみてはいかがでしょうか?

「ストレッチをすることは老化の防止にも繋がる」

男性の職員であれば、女性職員よりも率先して重たい方の介助を行ってしまうものですし、若い職員であれば、高齢の職員よりも率先して重たい方の介助を行ってしまうものです。
こういったことは助け合いの精神としてとても、チームワークとしても大切なことですが、やはり体には負担となってしまうものです。

現場の介護士に求められるのは、スタッフ間の声掛けで効率を良くし、無駄をなくすことで少しは楽に介護をすることもできるということです。

つまり、コミュニケーションが大切なのです。

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kumo

他も見てみたいという気持ちから特養、有料、ショート、デイ、訪問入浴で働いてきました。 特養では介護職として、デイサービスでは立ち上げから運営、そして現在は都内の施設で現場もこなす生活相談員として働いています。 自分の家族介護と介護士としての介護の経験が少しでも介護に悩む方の力になれたらと願っています。
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