悪いのはいつも介護側

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国の在宅推進、介護報酬の引き下げと介護従事者にとっては苦しい時期が続きますが、何よりも虐待関連のニュースが相次いだことは記憶にも新しいことです。
なかでも、川崎のSアミーユの高齢者を施設の上層階から落としたニュースは世間を大いに騒がせ、結果的に介護従事者にとって、より運営が難しくなるといった事態に結びついているのではないでしょうか?

家族を施設に預けることは、施設側にとっては「お客様を預かり、代わりに代金をいただく」といったサービスの流れの始まりですが、家族にとっては大切な家族を人質にとられるという気持ちになる方も多いことだと思います。

そもそも、日本では古くから「家族の介護はその家族がみる」というのが当然のことでしたが、医療の進歩や生活の質の向上により、介護を必要とする高齢者が増えたばかりでなく、少子化や女性の社会進出などで、家族が世話をすることの限界さえも見えてきている時代です。

まだ始まったばかりの超高齢社会と介護サービスですが、「介護を受ける側(要介護者)と介護をする側(介護者)のバランスが取れていないという現実をどれだけ理解しているのか」ということが、今後はもっとクローズアップされても良いのではないのかと考えてしまいます。
要介護者のためにある介護サービスは、要介護者の意思を優先することで、要介護者の可能性を大きく広げていますが、一方でその自由さは介護従事者を苦しませているのが現状です。

その結果は、介護職員の離職率の高さを見れば一目瞭然です。

先日、親戚が話していたことが少し気になったので、今回はそれを記事にさせていただきます。

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親戚の話

先日、私の親戚がこんなことを言っていました。

『私の知り合いが特養に入ることになったんだけど、結局、入って数ヶ月もしないうちに亡くなったのよ。最後はげっそりと痩せ細ってたから、施設の人たちがちゃんと食べさせてあげなかったからなんだと思う。』

実際、そこがどんな施設か、どんな手段を講じてきたのかもわかりませんが、本当に施設側が悪いのでしょうか?
まるで、施設側が本人の意思に関係なく野放しにしたような言い方ですが、実際に野放しにするようなことはありえませんし、それは考えられないようなことです。
ですが、私達介護従事者が抱く介護のイメージは、世間一般の介護のイメージとは大きく異なっています。

それもそのはずで、テレビなどのメディアでは「高齢者への虐待」か「介護職員の離職」、それと「介護保険と財政難」しか取り上げられておらず、ネガティブな印象のみが先行し、今では介護士の絶対的な印象である「優しい」というのも段々と薄れてきているのではないでしょうか?

実際のところ

『私の知り合いが特養に入ることになったんだけど、結局、入って数ヶ月もしないうちに亡くなったのよ。最後はげっそりと痩せ細ってたから、施設の人たちがちゃんと食べさせてあげなかったからなんだと思う。』という親戚の話の実際のところを、私の経験をもとに説明させていただきます。

特養に入って数ヶ月もしないうちに亡くなった

これは特養に限ったことではなく、高齢者にとって、環境の変化は予想以上の影響があります。
例えば、デイサービスに通っていた高齢者が、特養に移って少しして亡くなるということもよく聞く話ですし、実際にそういったケースはよくあるあることです。
若くて元気な方でも、精神病院に一年間入院することになれば、精神状態は明らかに変化するはずです。
特養の目的、その施設の利用者全員で作り出している雰囲気、そして嫌でも簡単には出れないという半ば監禁の状態ということを考えれば、その結果も不思議な事ではないように思えます。

逆に、「今までどおりの心で今まで通りの生活をその施設で続ける」「新しい環境で家族が思う理想の生活をする」といったことのほうが、はるかに難しいことなのではないでしょうか?

施設の人たちがちゃんと食べさせてあげなかった

高齢者の中には、もともと食の細い方もいれば、環境の変化などによって段々と食が細くなっていく方もいます。
そういった方に対して、介護士は食事介助を当然試みますが、それでも食べない方は多く、「食べる」ということを苦痛に感じている方も多くいます。
その原因として考えれるのは、主に「食事がまずい」「食べる気がしない」という2つです。
「食事がまずい」ということにに関しては、美味しい食べ物が毎日食べられる高級有料老人ホームがオススメですので、お金と相談するのが最も良い方法だと思われます。

次に「食べる気がしない」ということに関してですが、これは難しい問題です。
介護を知らない方からすれば、「そういった方に上手いこと食べるように促すのが、介護士の仕事ではないのか?」と思うかもしれませんが、そういった方に介護士から「では、具体的にどんな方法で促すべきなのか?」と聞けば、返ってくる答えは「それを考えるのが介護の仕事だろう」といったところではないでしょうか?

匂いで促したり、健康上の理由を説明したり、口が開いたタイミングを食事介助に利用したり、管理栄養士とその方に合った食事方法を相談したりと、どこの介護施設でもできることは当然しています。
ですが、それでも利用者が食べない時にはどうすれば良いのでしょうか?
可哀想に思えるほど嫌がっている場合にはどうすれば良いのでしょうか?
上手いこと口に入れても、吐き出してしまうような利用者の場合にはどうすれば良いのでしょうか?

こうなると「上手いこと食べさせることができないのは、介護士の介護の技術が低いから」と思う家族の方も多いかと思いますが、逆を返せば、それは家族の自己中心的な感情論にも思えてしまいます。
家族は、利用者本人が本当に嫌がっているのに、それでも食べさせることを介護側に望んでいるのでしょうか?
もしそうだとしたら、それは介護保険の利用者本位に反したものであり、見方によっては虐待とも捉えられることです。
だからといって、介護側は全面的に利用者を思いだけを鵜呑みにしているのではありません。
介護側は、利用者がうまく食べれることを常に考えています。

数年前までは、食事介助が困難な利用者に対して、針のない注射器のようなものを使った食事介助が行われていましたが、利用者の尊厳を尊重し現在は使用されていません。

利用者と家族の思いに板挟みされている介護側の気持ちは全く考えてはいただけないのでしょうか?
利用者が食べられない場合の具体的な食事介助方法を指定しないで、結果だけを悪く捉えるのであれば、施設などを利用せずにご自宅で納得のいく介護をされてはどうなのでしょうか?

まとめ

介護を全く理解されていない方や若い方には理解ができないことかもしれませんが、食べられないものはどうしても食べれれないのです。

私が以前に有料老人ホームで働いていた時、利用者の半数くらいの方から、「食事がまずい」というクレームが上がった時がありました。
こういったクレームは、有料老人ホームならではで、毎日のように聞くことなのですが、実際のところ、使っている食材は良いものですし、料理長も少し有名な方でした。
実際に私は検食として利用者と同じものを食べたことがありますが、かなり美味しかったのを覚えています。

視覚や聴覚に比べ、味覚の低下を自覚する人は少ないですが、一般に、味の閾値(味の違いが判る最小値)は加齢に伴って上昇し、味覚感受性は低下するといわれています。高齢者と若年者とでは、基本5味(甘味・塩味・酸味・苦味・旨味)のうち、特に塩味の閾値に差がみられると報告されています。

【参考:ニッスイ企業情報サイト

健康を維持する上で食事はとても大切なものですが、全ての利用者が美味しいと思えるような料理を提供するには、まだまだ研究が必要な段階であり、手間とコストを考えると今の時点ではなかなか難しいのが実際のところではないでしょうか?
ですが、どこの施設の厨房も意見やクレームを尊重し、常に改良を重ねています。
そして、介護側も今あるもので出来る限りのことをしていることも忘れないでいただきたいところです。

利用者の心のバランスを考えながら介助をしなければ、利用者との信頼関係はもちろんのこと、継続的な介護にも影響してきます。
そういったことをトータルで考えるのが「介護」ですが、それを惑わすのが家族の意見なのです。

介護側と利用者側がともに歩むことのできる「未来の介護」のために、家族側の理解が必要不可欠なのです。

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kumo

他も見てみたいという気持ちから特養、有料、ショート、デイ、訪問入浴で働いてきました。 特養では介護職として、デイサービスでは立ち上げから運営、そして現在は都内の施設で現場もこなす生活相談員として働いています。 自分の家族介護と介護士としての介護の経験が少しでも介護に悩む方の力になれたらと願っています。
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