もっと詳しいデイサービスの実情

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デイサービス 閉鎖

以前の記事、デイサービスの実情では、以前に私が働いていたデイサービスを例に、デイサービスの実際の状況についてお伝えしました。

一般的には、「高齢者の数が増えている=高齢者ビジネスは儲かる」という認識かもしれませんが、介護保険が絡んでくると一般的なビジネスとは大きく違ってきます。

今回の記事では、「デイサービスの実情」の記事よりももっと詳しいデイサービスの実際の状況を厚生労働省のデータをもとにお伝えしたいと思います。

東京商工リサーチの結果

まず、見ていただきたいのが2015年5月28日に公表された東京商工リサーチの調査結果です。

2015年1-4月「老人福祉・介護事業」の倒産状況

介護 倒産

【参考:東京商工リサーチ

Point !

これは、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを対象にした2015年1月から4月までの倒産状況の調査結果です。

倒産件数

注目して欲しいのが青色の老人福祉・介護事業の倒産件数です。

パッと見ただけでは前年の2014年よりも減少していると思われるかもしれませんが、2015年の31件というのはあくまで1~4月までということです。

つまり、このペースでいけば、前年の2014年の倍以上の倒産になるということを表しており、介護保険法が施行された2000年以降では過去最多のペースで推移しているということになります。

負債額

また、負債総額も34億3,300万円と前年同期に比べ21.3%増加したようです。

ここで注目したいのが、

ただし、負債10億円以上の大型倒産がゼロだったのに対し、負債5千万円未満が21件と倍増し、小規模企業が目立った。

という、小規模企業の倒産に限定されていたということです。

倒産の内訳

2015年1月から4月の老人福祉・介護事業倒産の内訳をみると、

  1. 「訪問介護事業」が12件(前年同期比50.0%増、前年同期8件)
  2. 「通所・短期入所介護事業」が11件(同120.0%増、同5件)

と、いずれも増勢しているようです。

ただ、これはあくまで東京商工リサーチの調査結果であり、氷山の一角であるとも言えます。

私が知りたかったのは、デイサービスの事業所を別の会社に売り払った件数だったのですが、どう探しても見つかりませんでした。

従業員別の内訳

従業員数別では、5人未満が21件で、小規模事業所の倒産が全体の約7割を占めた。

従業員数別が5人未満の事業所となると、小規模デイサービスにほぼ限定されてくるのではないでしょうか?

そして、注目すべきなのが、倒産した小規模事業所21件のうち、19件が2010年以降に設立した事業所ということです。

つまり、設立から5年以内の新規事業者の倒産が多かったということなのです。

原因別の内訳

原因別では、以下のようになったようです。

  1. 業績不振   :11件
  2. 事業上の失敗 :10件
  3. 他社倒産の余波:4件

小規模で考えられる業績不振は、介護報酬に対しての稼働率の低さが具体的な原因だと思われます。

小規模で考えられる事業上の失敗は、

  • 事業拡大の失敗
  • 指導や監査に関すること

だと思われます。

介護報酬に対しての稼働率の低さの要員

東京商工リサーチの調査結果では業績不振事業上の失敗がほぼ同じくらいの結果となりましたが、実際のところ、結果的には倒産する事業所の70%以上が業績不振だと思います。

業績不振の原因である介護報酬に対しての稼働率の低さは、以下の2つが主な要因ではないでしょうか?

  • 他産業からの新規参入による競争の激化
  • 2015年度の介護報酬のマイナス改定

では、ここからは以上の2つの業績不振の要因を中心にデイサービスの現況を説明していきます。

競争の激化

下の表は平成26年4月28日に公表された厚生労働省 社保審 介護給付費分科会の通所介護の請求事業所数です。

通所介護の事業所数

デイサービス 規模別

【参考:厚生労働省 平成27年度介護報酬改定に向けて

小規模型事業所: 7,075事業所(H18.4) → 21,218事業所(H26.3)

通所介護全体 :19,341事業所(H18.4) → 39,196事業所(H26.3)

この表からわかることは、ここ8年で通所介護の事業所数は爆発的に増えているということです。

今では朝の9〜10時頃にデイサービスの送迎車を見かけない日はないというくらい、そこらじゅうで送迎車を見かけます。

そして、どこのデイサービスでも利用者の獲得にあの手この手を使い必死になっており、高齢者の取り合い状態です。

2015年度の介護報酬のマイナス改定

なんといってもデイサービスの運営に大きな影響を及ぼしたのが、平成27年4月1日に施行された介護報酬のマイナス改定ではないでしょうか?

では、デイサービスを利用する方の要介護度の割合、サービス提供時間の割合を見た上で、改訂前と改定後の介護報酬を見ていきたいと思います。

要介護度

以下がデイサービスを利用する方の要介護度の割合です。

通所介護の要介護度別利用者割合

  1. 要介護1:26%
  2. 要介護2:22%
  3. 要介護3:13.2%

【参考:厚生労働省 平成27年度介護報酬改定に向けて 

所要時間

通所介護の所要時間別のサービス提供割合

  1. 7時間以上9時間未満:56.67%
  2. 5時間以上7時間未満:37.08%
  3. 3時間以上5時間未満:5.20%

【参考:通所介護の報酬・基準について(案)

上記の結果からもわかるように、ほとんどのデイサービスでは、5~7、7~9をとっていることがわかります。

介護報酬

以上の所要時間の結果をふまえた上での、所要時間5〜7時間未満、7時間〜9時間未満の介護報酬の改定が以下になります。

所要時間5時間以上7時間未満の場合

  • 要介護1:705単位   改正後→641単位
  • 要介護2:831単位   改正後→757単位
  • 要介護3:957単位   改正後→874単位
  • 要介護4:1,082単位  改正後→990単位
  • 要介護5:1,208単位  改正後→1,107単位

所要時間7時間以上9時間未満の場合

  • 要介護1:815単位   改正後→735単位
  • 要介護2:958単位     改正後→868単位
  • 要介護3:1,108単位  改正後→1,006単位
  • 要介護4:1,257単位  改正後→1,144単位
  • 要介護5:1,405単位  改正後→1,281単位

【参考:厚生労働省 指定居宅サービス通所介護費

平成26年介護事業経営実態調査

ここで平成26年介護事業経営実態調査結果の延べ利用者数151~300人の通所介護(予防を含む)を見てみると、介護事業収益 238万円(収入)- 介護事業費用 220万円(支出)= 差引(18万円)となっており、さらに法人税等を引くと、その差引は16万円となっていることがわかります。

給与費が収入の56.8%、その他の介護事業費用が30.1%となっています。

また、延べ利用者数151~300人の通所介護事業所は、870施設と通所介護事業所の中で最も多い施設数となってます。

そして、注目したいのが、経営主体別の介護事業収益と法人税等差引で、

  1. 社会福祉法人 :介護事業収益 526万円 法人税等差引 55万円
  2. 社会福祉協議会:介護事業収益 431万円 法人税等差引 19万円
  3. 医療法人   :介護事業収益 433万円 法人税等差引 36万円
  4. 営利法人   :介護事業収益 351万円 法人税等差引 48万円
  5. その他法人  :介護事業収益 299万円 法人税等差引 20万円

後続参入と思われる規模が小さい営利法人、その他法人の介護事業収益は社会福祉法人の約66%以下になっているということであり、その他法人については、法人税等差引が社会福祉法人の半分以下になっているということです。

営利法人の法人税等差引が高いのは、減価償却費、委託費を抑えているからであり、社会福祉法人の収入が高いのは、法人税がゼロということが大きな要因に思われます。

まとめ

介護報酬が下がったからといって、職員の給料は下げれません。

ましてや、デイサービスの人員基準がある以上、職員の人数を減らすということもできないのが当然のことですが、収入に対する給与費の割合が73.7%のデイサービスでは、実際のところ、人件費の削減のために職員を自ら辞めさせるというのは多いケースだと思われます。

そして平成27年の介護報酬の改定でその収支差率はさらに下がると思われます。

介護事業経営実態調査における収支差率の推移

デイサービス 収支差

【参考:厚生省 平成26年 介護事業経営実態調査結果

この表は介護事業経営実態調査における収支差率の推移です。

デイサービス(通所介護)は平成26年の時点で10.6%ですから、次の平成27年介護事業経営実態調査で発表される収支差率はさらに下がると思われます。

介護報酬が下がった理由

簡単に説明すると、

財務省の言い分としては、

「財政難の日本において、高齢者は増加し毎年1,000億円ちかく介護に払っていられない。

老人ホームとかを経営している社会福祉法人は

  • 法人税を納めなくてよい
  • 建物や土地についても固定資産税は原則収めなくてもよい

だとしたら、蓄えは結構あるのではないのか?」

→財務省による新年度の予算案で介護報酬を削減決定

ということです。

通所介護の費用額

以下の表が、通所介護の費用額の推移を表したものです。

通所介護の現状について(費用額)

デイサービス 費用別

【参考:厚生労働省 平成27年度介護報酬改定に向けて 

平成25年度の通所介護(介護予防サービスを含む)の費用額は約1.5兆円(平成13年度の約 4倍)で、平成25年度費用額累計約8.9兆円の約16.9%を占める。

近年は、毎年約1,000億円ずつ増加している。

通所介護の利用者数

以下の表が、通所介護の利用者数の推移を表したものです。

通所介護の現状について(利用者数)

デイサービス 利用者別

【参考:厚生労働省 平成27年度介護報酬改定に向けて 

平成24年度末現在、通所介護の利用者は、約160万人(平成13年度末の約2.5倍) で、介護サービス(介護予防含む)利用者全体の概ね3人に1人が利用している。

まとめのまとめ

介護報酬が下がったことによって、介護事業所は今まで以上に無駄をなくす努力を強いられます。

無駄をなくすだけであれば良いことですが、必要以上に削れるところを削ることはあまり良いことには思えません。

それは最終的に介護をする従業員の勤務の姿勢、提供するサービスの質にも現れかねないからです。

また、今まで以上に営業をしいられるとも思います。

営業をするのであれば、営業要員を雇えば良いのですが、経営がさらに厳しくなるこれからを見据えると今いる人員から営業に出すこと以外に手はないように思えます。

ですが、介護職員が一人いないだけでサービスの質が落ちるだけでなく、施設に残る介護職員の負担も大きくなります。

できることなら良いサービスを心がける上で毎日楽しく仲良く働きたいものですが、ギスギスしてくると余計に悪循環へと結びついてしまいそうにも思えます。

結果的にうまくいかないのであれば閉鎖をしてしまえば良い、というのは経営者の勝手すぎる考えです。

介護職員はギリギリ、次の職場を探せば良いのですが、追い出されることになった利用者のことはしっかりと考えているのでしょうか?

近くの事業所に譲り渡すのであれば、そこの事業所からはもてはやされ、まるで良い結果のようになるかもしれませんが、認知症の方にとって環境の変化はとても大きなことです。

認知症の方だけでなく、新しいところに入っていく利用者にとっても最初は良い影響はないと言えます。

儲からないから「それじゃ、さようなら」これはひどすぎるのではないでしょうか?

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kumo

他も見てみたいという気持ちから特養、有料、ショート、デイ、訪問入浴で働いてきました。 特養では介護職として、デイサービスでは立ち上げから運営、そして現在は都内の施設で現場もこなす生活相談員として働いています。 自分の家族介護と介護士としての介護の経験が少しでも介護に悩む方の力になれたらと願っています。
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