「特養の入所待ち問題」と「要介護者の奪い合い問題」の行く末

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介護従事者でなくても、特別養護老人ホーム(以下:特養)の待機者問題についてはご存知のことだと思います。
「何年待てばよいのか」といった声も多く聞かれ、「介護疲れ」というワードも多く目にするようになりましたが、平成28年の介護保険法改正で、特養に入所制限ができ、事態は大きく変わってきたようです。

「特養待ち」問題

特養の入所待ちの方は、全国で約52万人とされています。
その入所待ちの方が、日々増えていくことが大きな社会問題となり、行き場に困った家族の「介護疲れ」「介護うつ」もまた大きな社会問題となっていました。

特別養護老人ホームの入所申込者の概況入所待ち

【参考:特別養護老人ホームの入所申込者の状況

「特養待ち」の受け皿的存在

認知症が進行し、手に負えなくなったとしても、すぐに特養に入れるわけではありません。
全国で52万人の方が順番に並んでいる以上は、その家族がどんな状況だとしても、どんなに入所させたいと思っても特養に入れることはできないのです。

介護サービスの中で、要介護者と家族が離れることができるサービスはたくさんありますが、一日以上離れることができるサービスは限られています。

要介護者と一日以上離れることができるサービス

  1. 短期入所生活介護(ショートステイ)
  2. 有料老人ホーム
  3. サービス高齢者向け住宅
  4. 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  5. 小規模多機能型居宅介護
  6. お泊りデイサービス

では、なぜ、特養に集中してしまうのか?

そこにはいくつかの理由があると思います。

  1. 期間が定められたところであれば、いずれは特養に入所することとなる。
  2. 特養以外の選択肢を知らない。
  3. 有料などは金銭的に高いイメージがある。
  4. 特養は終の棲家なので、入所させて、もう離れて暮らしたい。

様々な理由があると思われますが、短期間の入所施設は、家族にとっても本人にとってもやはり良いものだとは言いがたいものがあります。

わたしの場合であれば、母は最初にデイサービスを利用し、短期入所生活介護、そして特養といった流れでしたが、短期入所生活介護から帰ってきて、特養に入所させるまでの数日間は本当に心が締め付けられる思いでしたし、本人にとっても辛く苦しい時間だったと思います。

法改正による大きな変化

特養の入所待ち問題を解決するための大きな一手となったのが、介護保険法の改正でした。
これは平成27年の4月から施行されたもので、内容は「特養に入所できるのは原則として要介護 3 以上」というものでした。

例外って?

「原則」とつくように、3以下の例外も認めるということであり、その例外とは

  1. 認知症で、日常生活に支障を来すような症状等が頻繁に見られること
  2. 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状等が頻繁に見られること
  3. 深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難な状態であること
  4. 単身世帯等家族等の支援が期待できず、地域での介護サービス等の供給が不十分であること

の4つとされています。

その結果どうなったのか?

要介護1・2に入所制限をかけたことで、特養の入所待ちの方は激減したとされていますが、全国の集計は厚生労働省も調査中であり、今年の秋には公表される予定とされています。

ただ、「とにかく特養をどんどんと作れ!」と騒いでいた方も多くいましたし、国も特養を増やすことに力を注いでいたので、今後はそこに制限がかかるか、特養の運営が危なくなる事態も避けられないのではないでしょうか?

まとめ

色々と調べてみると、特養の多い地域では、今まで「来て当たり前」の状況が一変したので、かなり苦しくなってきているという情報も流れています。

逆に、その他の介護サービス事業所は、要介護1・2が特養に入れなくなってきたことにより、利用者が増えているということが考えられるのですが、私が働いている事業所・私の知り合いの事業所では、稼働率が低下傾向にあり、実際のところはわかりません。

ただ、「要介護者を奪い合う」といった状況は、介護サービスの質の底上げという点で、大きなメリットが有ることに思えます。

逆にデメリットとしては、高齢者の思いを叶えやすくしてしまう「勘違いした事業所」が出てきてしまうという恐れもあります。
これは「ちやほやさせる」というわけではありませんが、高齢者のわがまま・家族のわがままを受けざるをえない状況を作り、それが波及し、その後利用する介護サービス事業者までが影響を受けるような悪循環になってしまうこともあるのではないでしょうか?

高齢者本人も「やってくれて当たり前」といった状況が蔓延してしまえば、今以上に介護士の離職率が上がり、同時に虐待も増えていくというのが最悪の結果かもしれません。

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kumo

他も見てみたいという気持ちから特養、有料、ショート、デイ、訪問入浴で働いてきました。 特養では介護職として、デイサービスでは立ち上げから運営、そして現在は都内の施設で現場もこなす生活相談員として働いています。 自分の家族介護と介護士としての介護の経験が少しでも介護に悩む方の力になれたらと願っています。
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