前回の記事「認知症の症状と原因」では、認知症という病気の症状、そして原因について説明させていただきました。
ここからは認知症の治療法と予防法について厚生労働省の情報を参考に説明させていただきます。
気になるところをお読みください
治療法
今現在、認知症を完全に治す薬は開発されていませんが、アルツハイマー病の新薬の開発は常に急ピッチで進められています。
詳しくは下の研究状況をご覧ください。
根治療法
認知症を完全に治す治療法はまだありません。
そこでできるだけ症状を軽くして、進行の速度を遅らせることが現在の治療目的となります。
治療法には薬物療法と非薬物療法があります。
このうち薬物療法は、アルツハイマー病の中核症状の進行をある程度抑える効果が期待される薬が若干あるだけで、脳血管性認知症に効果がある薬剤は今のところ存在しません。
そのため、非薬物療法によって症状を抑えることが主な治療法となります。
中核症状への治療
アルツハイマー病では、塩酸ドネペジルなどの抗コリンエステラーゼ阻害薬に中核症状の一時的な改善効果が認められています。
この効果は一時的で、進行を完全に抑えるものではありません。
進行を遅らせるだけですので、できるだけ早くから治療を開始して、少しでも軽症の段階にとどめるようにすることが大切です。
周辺症状へはまず非薬物療法を中心に
周辺症状は中核症状よりも介護者の強い苦痛になることが多く、効果的な薬をつかって症状をおさえたくなるのですが、かつて周辺症状に使われていた薬の中には、認知症の症状をかえって悪化させるものがあるので、薬物療法には慎重を要します。
まずは薬に頼らず、患者さんを刺激しない、規則正しい生活をおくるようにこころがける、環境を急激に変えないようにする、などを基本とします。
また、認知能力を高めるためのリアリティ・オリエンテーション、簡単な楽器演奏や運動などで刺激を与える、過去を回想するなどの療法を行う場合もあります。
将来への期待
アルツハイマー病は脳内にアミロイドβという物質が蓄積して、それが神経細胞の変性に関係すると考えられています。
そこで、アミロイドβを蓄積させない治療法を開発しようと、世界中の研究者がしのぎを削っています。
アミロイドβの蓄積を阻害する安全な薬が開発されれば、アルツハイマー病はそれ以上の神経変性を起こさなくなると考えられています。
そうなれば、認知症の進行が完全にストップする可能性もあります。
ただし、一度変性し、消滅した神経細胞は再生しないので、進行した認知症では失われた機能を回復することは難しいという問題が残ります。
その意味でも早期発見・早期治療は今後ますます重要になってくると考えられます。
早期発見・早期治療で認知症を回避
アミロイドβの蓄積を阻害する薬が現実になりつつある今、認知症の早期発見・早期治療が今まで以上に重要になってきています。
軽度認知障害の多くはアルツハイマー病になる前の段階であると考えられていることから、この段階で治療を開始すれば、認知症になることを防ぐことも将来的に可能になると考えられます。
現在の軽度認知障害の治療は、認知症の予防に効果がある生活環境をとりいれ、高血圧や糖尿病、高脂血症などを治療し、必要に応じて抗コリンエステラーゼ薬を服用するという内容で行います。
【参考:厚生労働省 みんなのメンタルヘルス】
研究の状況
今のところ、厚生労働省の情報では根本的治療法が期待できるのはアルツハイマー病治療薬に限られているとされています。
現時点でとくに期待されるものにβ-セクレターゼ阻害薬、γ-セクレターゼ阻害薬、ネプリライシン、アミロイドの抗原もしくは抗体療法があります。これらはいずれも、この病気の本体とみなされる老人斑を構成するアミロイドβの除去をめざすものです。
なお最近、注目され話題になった治療薬にDimebonがあります。これについては、米国での治験が2010年3月に失敗に終わり、現時点では治療効果はないものと考えられています。
iPSで進む新薬開発
iPS細胞によって病気の仕組みの解明が進められているのがアルツハイマー病です。
今、アルツハイマー病の新薬の開発がiPS細胞の技術で大きく変わろうとしています。
患者の皮膚からiPS細胞を作り、アルツハイマー病になった神経細胞を再現することに成功しました。
【参考:クローズアップ現代】
今までは、アミロイドβがたまることで、脳の神経細胞が死滅すると考えられてきました。
ところが、複数の患者のiPS細胞から神経細胞を作り詳しく分析したところ、人によって状態が異なることが分かってきました。
アミロイドβのたまり方に、少なくとも3つのタイプがあったのです。
この結果は、アルツハイマー病の新薬開発を目指す企業にも大きな影響を及ぼしています。
それが新薬の候補として開発を進めるT-817MAです。
動物の神経細胞を使った実験では、アミロイドベータを加えると、通常、神経細胞は死滅するところが、T-817MAを投与したところ、死なずに活動を続けることが確認されています
計画では、7年後に販売予定です。
このクローズアップ現代は、2014年9月18日に放送されたものなので、残り6年ということになります。
新オレンジプラン
新オレンジプランの主な推進のポイントとして、各省連携の「脳とこころの健康大国実現プロジェクト」に基づき、2020年頃までに日本初の認知症根本治療薬の知見開始を目指すということがかかげられています。
認知症の予防法
アルツハイマー病の原因となるのはアミロイドβという脳から出るタンパク質です。
ふだんはこのアミロイドβを、インスリン分解酵素が分解してくれています。
食生活が乱れると、インスリンを分解するのに忙しくなって、アミロイドβに手が回らなくなります。
つまり、食生活が乱れることは認知症とも関係することになるのです。
インスリンが多い人は
- 2型糖尿病の初期段階や糖尿病予備軍の人たち
- 肥満の人
- 運動不足 筋肉不足
では、ここから
- 炭水化物を避け、内臓脂肪減らす
- 運動・有酸素運動をする
という、ことにピックアップして説明していきます。
【参考:NHK ためしてガッテン】
炭水化物
<炭水化物を多く含む食品・食材のジャンル別ランキング>
【穀類】
- コーンフレーク 83.6%
- 押し麦 77.8%
- フランスパン 57.5%
- ライ麦パン 52.7%
- 餅 50.3%
【麺類】
- 緑豆はるさめ(乾)84.6%
- そうめん(乾) 72.7%
- パスタ(乾) 72.2%
- 中華麺(茹で) 29.9%
- そば(茹で) 26.0%
【野菜】
- さつまいも 39.0%
- ゆりね 28.7%
- 山いも 27.1%
- かぼちゃ 21.3%
- とうもろこし 18.6%
【参考:microdiet.net】
内臓脂肪
皮下脂肪のなかにつくのが内臓脂肪で、皮下脂肪に比べ、内臓脂肪は落としやすいと言われてます。
そして生活習慣病と関係が深いのが内臓脂肪と言われています。
内臓脂肪がついてしまう原因は主に以下の2つです。
- 過食
- 運動不足
そして効率よく脂肪を落とす方法が有酸素運動と言われています。
運動
有酸素運動も脳を活性化させ、アルツハイマー病のリスクを下げることが知られている。
【参考:NHK ためしてガッテン】
アルツハイマーで主に障害を受ける「海馬」という記憶などをつかさどる部分はジョギング程度の軽い運動をすることで活性化されます。
これは、ジョギング程度の軽い運動をすることにより、肝臓でIGF-1という脳の神経細胞を成長させる物質ができるためです。
このIGF-1が、海馬に届くのです。
有酸素運動
有酸素運動は、体脂肪を燃やす効果があります。
継続的で比較的弱い力を筋肉にかけ続けることによって、エネルギー源として体内に蓄えられている体脂肪を酸素で燃焼させます。
主な有酸素運動は以下の4つです。
- エアロビクス
- エアロバイク
- ウォーキング
- ゆっくりした水泳
20分以上続けることで脂肪燃焼が効果的に起こります。
【参考:有酸素運動と無酸素運動】
昼寝
軽度認知障害の予防には、短い昼寝が効果的とされています。
【参考:NHK ためしてガッテン】
昼寝ですが、実は寝ているのは20分程度だそうです。
30分以内の短い昼寝なら、アルツハイマー病に効果があるということもわかっています。
でも、長すぎると夜眠れなくなり逆効果になりますので注意が必要です。
食事
軽度認知障害の予防には、料理が効果的とされています。
【参考:NHK ためしてガッテン】
効果創意工夫は脳を活性化させます。
- 料理の献立は、みんなで決める。
- 材料のありなしも確認し、まとめてゆく。
- 下ごしらえや調理など、作業の分担も自分たちで決めてゆく
こういった手順や献立の工夫が毎回、脳を活性化させるのです。
生活習慣
生活規則正しい生活にしていくことは認知症の予防や進行を遅らせるのに大切なことと言われています。
それは
- 高血圧
- 糖尿病脂質異常症
などの生活習慣病の方は、アルツハイマー型認知症になりやすく、進行も早いという研究報告があるからです。
生活習慣病の原因でもある
- 乱れた食生活
- 喫煙
- 飲酒
などは脳血管性認知症の原因とされているので食生活を中心とした生活を規則正しいものにしていくことが大切とされています。
まとめ
私の母はアルツハイマー型の認知症です。
今では植物状態となっています。
今ままで幾つかの施設で働き多くの認知症の方を見てきましたが、アルツハイマー型の認知症の方は、母と似ています。
「何をしても忘れてしまう」「どんなこともすぐに失われる」、そしていつか「ただ生きている」という状態になるアルツハイマー型認知症は、お互いにとってとても辛いものです。
ますます増えていくと予想される認知症の方の数にどこまで対応できるのかが、今後、高齢者事業や高齢者産業にとって大きなことになってきます。
決して人ごととは思えない認知症ですが、できるだけ早く治療薬ができることを心から願っています。
次の認知症の記事では、認知症の方へのアプローチと認知症への取り組みを書きたいと思っていますが、やはり真に受けて考えると少し憂鬱にもなります。
施設で働く方、認知症の方と一緒に住まわれてる家族の方、本当に大変だと思います。
以前、私が生活相談員としてアセスメントで伺った方のご自宅では、トイレほどの小さな部屋に認知症の方を閉じ込めている家族もありました。
「なぜ、認知症なんて病気があるのか」私はただ憎むだけしかできませんが、今、国では認知症の方が住みやすい環境、認知症の方を抱える家族を支える環境にしていくという取り組みがなされてきています。
少しづつでも皆が安心して暮らせる世の中になるのを願っています。

kumo

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