高齢者施設で起こり得る感染症

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前回の記事「高齢者に多い感染症の簡単な説明」に引き続き、高齢者施設で起こり得る感染症についてを、国立感染症研究所の資料を参考に説明していきます。

第2回目にあたる今回は、一度は聞いたことがあると思われる「疥癬・MRSA・緑膿菌」についてです。

  • 疥癬
  • 薬剤耐性菌感染症
    • MRSA
    • 緑膿菌

【参考:国立感染症研究所

疥癬

  • 疥癬は、ヒゼンダニが皮膚の最外層である角質層に寄生し、人から人へ感染する疾患である。
  • 非常に多数のダニの寄生が認められる角化型疥癬(痂皮型疥癬)と、少数寄生であるが激しい痒みを伴う普通の疥癬(通常疥癬)とがある。

感染経路

ヒゼンダニは、卵→幼虫→若虫→成虫と約2週間で成熟する。幼虫、若虫、雄成虫は人の皮膚表面を歩き回るため、 皮膚同士の接触によって感染する。(患者は年間8〜15万人)

感染直後は全く症状がないが、感染後約4〜6週間で多数のダニが増殖し、その虫体、脱皮殻や排泄物(糞)によって感作されることにより、アレルギー反応としての激しい痒みが始まる。

感染経路は人と人との接触がほとんどである。従って、家族、介護者、セックスパートナーの他、ダンスの相手やこたつで行う麻雀の仲間、また、畳での雑魚寝などでも感染する可能性があるが、ヒゼンダニはヒトの体温より低い温度では動きが鈍く、16℃ではほとんど運動しなくなる。通常の社会生活で、通常疥癬患者と数時間並んで座った程度では、感染する可能性はほとんどない。

疥癬の集団発生に関するアンケート調査を実施した報告では、集団発生を経験したことがある 施設は養護老人ホームで45%、特別老人ホームは79%であった。多くは10人以下の集団発生であったが、41人以上の集団発生も5施設あった。患者の発生が持続する期間は1〜6カ月89%、6カ月〜1年8.2%、1〜2年2.6%で2年以上も1施設みられた。

疥癬

治療・予防

ヒゼンダニを殺すことを目的とした飲み薬や、塗り薬が使われる。塗り薬は正常なところも含めて塗り残しがないように首から下の全身にくまなく塗る。また、痒みに対しては痒み止めの内服薬を用いる。

通常の疥癬患者とは皮膚の直接接触を避ければ感染の心配はないので、隔離は必要ないが、角化型疥癬患者は短期間個室管理とし、処置をする場合は感染予防に努める。また、角化型疥癬の場合、ダニの数が著しく多いので、患者が使用したリネン、毛布、布団、ベッ ドマット等にはダニが存在する可能性がある。ある研究では、25℃で湿度90%の条件で3日間生存すると言われているため、こ れら患者が直接触れた寝具類は50℃以上のお湯に10分以上浸すか、大型の乾燥機で20−30分処理すれば、全てのダニを殺すことが可能である。

薬剤耐性菌感染症

薬剤耐性菌とは、簡単にいってしまえば、薬が効かない菌のことで、薬剤耐性菌感染症には主に以下のような疾患が含まれます。

  • 多剤耐性アシネトバクター感染症
  • 多剤耐性緑膿菌感染症/薬剤耐性緑膿菌感染症
  • バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症
  • バンコマイシン耐性腸球菌感染症
  • ペニシリン耐性肺炎球菌感染症
  • メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA)

  • 黄色ブドウ球菌は、ヒトや動物の皮膚、消化管内などの体表面に常在するグラム陽性球菌である。
  • 通常は無害だが、皮膚の切創や刺創などに伴う化膿症や膿痂疹などの皮膚軟部組織感染症から、肺炎、腹膜炎、敗血症、髄膜炎などに至るまで様々な重症感染症の原因となる。
  • 食中毒やトキシックショック症候群、腸炎などの原因菌ともなる。

MRSA の病原性と感染症

1980年代の後半より、国内の医療施設でMRSAが問題となり始めたが、当時の分離率は高くても1割程度と推定されていた。しかし、現在では、臨床分離される黄色ブドウ球菌の6 割程度がMRSAと判定される事態に至っている。

通常の感染防御能力を有する人に対しては一般的に無害であり、医療施設外で日常生活が可能な保菌者の場合は、除菌のための抗菌薬投与は基本的には必要ない。また、抗菌薬を使用しない老人施設など長期療養型の施設においては、MRSA が黄色ブドウ球菌を凌いで優位に蔓延する可能性は少ない。

薬剤耐性緑膿菌感染症

  • 緑膿菌は、水まわりなど生活環境中に広く常在するが、健常者には通常、病原性を示さない弱毒細菌の一つである。
  • 抗菌薬にも耐性を示す傾向が強く、古くより、感染防御能力の低下した患者において、術後感染症などの日和見感染症の起因菌として問題となってきた。
  • 最近、緑膿菌に効果が期待されるフルオロキノロン系抗菌薬、アミノ配糖体系抗生物質などに幅広く耐性を獲得した臨床分離株が、散発的ではあるが各地の医療施設で臨床分離されるようになり、「多剤耐性緑膿菌」としてその動向が警戒されている。

治療・予防

緑膿菌は、「流し台」などの「水回り」からしばしば分離される常在菌であるため、この菌が、医療施設内の環境を広範に汚染しないよう、日常的に病室病棟の清掃や流し台、入浴施設などの清潔や消毒に心掛ける。また、人工呼吸器、ネブライザー、吸痰チューブなどの汚染にも注意し、処置時の手袋の着用などにより、菌の拡散や伝播を抑制する。
緑膿菌は、口腔や腸管内にも棲息する菌であるため、喀痰や便などから少量菌が分離された場合でも、呼吸器感染症などの感染症症状を呈していない場合や感染症の主起因菌となっていない場合には、除菌の目的で積極的な抗菌薬投与は行わない。「内因性感染症」か「外因性感染症」かの判定を行い、外因的な感染源が想定または特定された場合には、その対策を講じる。

(1)内因性感染症

癌などの悪性消耗性疾患などの末期には、腸管内などに棲息する菌が、腸管の膜を通過し血液中に侵入することで、しばしば菌血症や敗血症などを続発する。このような事態は、患者の感染防御能力の低下に伴うものであり、防ぐことが困難な場合も多い。

(2)外因性感染症

緑膿菌は、環境中に広く分布する細菌であるため、輸液用の製剤や点滴回路が汚染された場合、人為的に血中に菌が送り込まれる事態も発生しうる。同時多発的に、複数の患者から緑膿菌が分離される場合には、そのような事態も想定し緊急に原因の解明や対策を講じる必要がある。

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kumo

他も見てみたいという気持ちから特養、有料、ショート、デイ、訪問入浴で働いてきました。 特養では介護職として、デイサービスでは立ち上げから運営、そして現在は都内の施設で現場もこなす生活相談員として働いています。 自分の家族介護と介護士としての介護の経験が少しでも介護に悩む方の力になれたらと願っています。
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