高齢者施設と感染症の押さえるべきポイント

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私が住む区には、同業者間でちょっと有名な施設があります。
なぜ有名なのかというと、「他よりも明らかに時給が高い給料で常に募集をしている」ということもあるのですが、「集団感染で一度ニュースにもなったことがある」ということがやはり印象的でした。
もちろん、自分が働いていたところがたまたま集団感染しなかったというだけなのですが、今考えてみると、感染に対しての研修を職員全員が受けていたからということもあります。

今回の記事では、厚生労働省の資料を基に高齢者介護施設における感染のリスク対策として、押さえるべきポイント・対策・行政への報告方法などをまとめました。

【参考:厚生労働省 高齢者介護施設における感染対策マニュアル
【参考:厚生労働省 医療施設における院内感染の防止について
【ダウンロード:厚生労働省 付録(書式) 88ページ〜】

高齢者介護施設と感染対策

注意すべき主な感染症

厚生労働省では、高齢者介護施設において、予め対応策を検討しておくべき主な感染症とし て、以下の3つを挙げています。

① 集団感染を起こす可能性がある感染症

入所者及び職員にも感染が起こり、媒介者となりうる感染症・集団感染を起こす可能性がある感染症

  • インフルエンザ
  • 感染性胃腸炎(ノロウイルス感染症等)
  • 腸管出血性大腸菌感染症
  • 痂皮型疥癬
  • 結核 など

② 高齢者施設で考えられる感染症

健康な人に感染を起こすことは少ないが、高齢者介護施設では集団感染の可能性がある薬剤耐性菌による感染症

  • メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)
  • 緑膿菌感染症

③ 集団感染に発展する可能性が少ない感染症

集団感染に発展する可能性が少ない血液、体液を介して感染する感染症

  • 肝炎 (B型、C型)
  • HIV 感染症 など

【参考:厚生労働省 高齢者介護施設における感染対策マニュアル

感染対策

感染症に対する対策の柱

  1. 感染源の排除
  2. 感染経路の遮断
  3. 宿主(ヒト)の抵抗力の向上

感染源

感染源となる可能性があるもの

  1. 嘔吐物・排泄物(便・尿など)
  2. 血液・体液・分泌物(喀痰・膿みなど)
  3. 使用した器具・器材(注射針、ガーゼなど) 4 上記に触れた手指で取り扱った食品など

素手で触らず、必ず手袋を着用して取り扱います。
また、手袋を脱いだ後は、手洗い、手指消毒が必要です。

感染経路の遮断

感染経路の遮断

  1. 感染源(病原体)を持ち込まないこと
  2. 感染源(病原体)を持ち出さないこと
  3. 感染源(病原体)を拡げないこと

主な感染経路と原因微生物感染1

【参考:厚生労働省 高齢者介護施設における感染対策マニュアル

感染が起きやすい高齢者施設とは?

インフルエンザやノロウイルスのような感染症が起きやすい高齢者施設は、

  • 短期入所サービス
  • 通所サービス

とされています。

これは、施設内でまったく新規に発生することはまれであり、新規入所者等、職員、面会者などが施設外で感染して施設内に持ち込むことが多いという考えからです。
つまり、高齢者介護施設における感染対策では、これらの感染症の病原体を施設の外部から持ち込まないようにすることが重要です。
中でも職員は、入所者と日常的に長時間接するため、特に注意が必要です。
日常から健康管理を心がけるとともに、感染症に罹患した際には休むことができる職場環境づくりも必要です。

高齢者介護施設における感染対策 感染2

【参考:厚生労働省 高齢者介護施設における感染対策マニュアル

高齢者の健康管理

厚生労働省では、高齢者の健康管理として以下の2点を挙げています。

  • 入所時の健康状態の把握
  • 入所後の健康管理

この2つの点に関しては、高齢者施設で働く方であれば一度は聞いたことがあると思いますので、ポイントだけ説明させていただきます。

入所に関しての注意点

基準省令第4条の24:
感染症の既往があることや慢性感染症に罹患していることは、サ ービス提供を拒否する理由とすることはできません。(入院加療が必要であると医師が判断する病状の場合を除きます。)

基準省令第4条の34:
医学的な理由によりサービス提供を拒否する場合は、適切な病院を照会するなどの適切な措置を速やかに講ずることが求められます。

高齢者介護施設における感染管理体制

基準省令第27条には、「施設内の他の委員会と独立して、感染対策委員会の設置・運営が必要」とされています。

感染対策委員会の設置

委員会のメンバー構成の例感染委員会

マニュアルに記載される内容の例
感染マニュ

感染力が強いインフルエンザについて

【参考:厚生労働省 高齢者介護施設における感染対策マニュアル

高齢者介護施設内の衛生管理

厚生労働省の「高齢者介護施設内の衛生管理」では、トイレやゴミ箱などに手が触れないための環境整備ということがポイントになっています。

望まれる衛生管理

  • 自動水栓、肘押し式、センサー式、または足踏み式蛇口の設置
  • ペーパータオルの設置
  • 足踏み式開閉のゴミ箱の設置
  • 手洗い後にドアに触れることを避けるためにも、トイレの出入口はドアのない形態にするなど

また、トイレ内は空気・湿気がこもると菌の温床となりやすく、感染症を拡大しやすい環境ともいえます。

衛生管理の注意事項

衛生管理のポイントとなるのは、トイレ・浴室・床とされていますが、掃除の際に意外に忘れがちなのが以下の4つです。

  1. 広範囲の拭き掃除へのアルコール製剤の使用や、室内環境でのアルコールなどの噴霧はやめましょう。
  2. 部屋の奥から出口に向かって清掃しましょう。
  3. 清掃ふき取りは一方方向で行います。
  4. トイレ、洗面所、汚染場所用と一般病室用のモップは区別して使用、保管し、汚染度の高いところを最後に清掃するようにします。

感染性廃棄物の取り扱い

【参考:厚生労働省 高齢者介護施設における感染対策マニュアル

感染症発生時の対応

発生時の対応としては、基本的に以下の手順で行います。

  1. 発生状況の把握
  2. 感染拡大の防止
  3. 医療処置
  4. 行政への報告
  5. 関係機関との連携

感染症発生時の対応フロー 感染が起きたら

行政への報告

報告が必要な場合

  1. 同一の感染症や食中毒による、またはそれらが疑われる死亡者や重篤患者が1週間以内に2名以上発生した場合
  2. 同一の感染症や食中毒の患者、またはそれらが疑われる者が10 名以上又は全利用者の半数以上発生した場合
  3. 上記以外の場合であっても、通常の発生動向を上回る感染症等の 発生が疑われ、特に施設長が報告を必要と認めた場合

報告する内容

  • 感染症又は食中毒が疑われる入所者の人数
  • 感染症又は食中毒が疑われる症状
  • 上記の入所者への対応や施設における対応状況 等
報告の書式

市町村等の高齢者施設主管部局への報告用紙書式例(90ページ)

関係機関との連携など

状況に応じて、次のような関係機関に報告し、対応を相談し、指示を仰ぐなど、緊密に連携をとりましょう。

  • 配置医師(嘱託医)、協力医療機関の医師
  • 保健所
  • 地域の中核病院のインフェクションコントロールドクター(ICD)
  • 感染管理認定看護師(ICN)
  • 職員への周知
  • 家族への情報提供

【参考:厚生労働省 高齢者介護施設における感染対策マニュアル

まとめ

やはり大切になってくるのが、感染に対しての意識とチームワームです。
感染を拡大させるちょっとした要因の1つに「介護施設の経営難」があると思われます。
コスト対策として、ディスポやおむつなどの使用を制限している施設は、後の大きな事態を招きかねません。

手袋を着用するとともに、これらが飛び散る可能性のある場合に備えて、マスクやエプロン・ガウンの着用についても検討しておくことが必要です。

インフルエンザに関しては、感染の拡大が十分に考えられますので、流行情報をチェックしておくこともお勧めします。

インフルエンザ流行情報の入手先

相談窓口

厚生労働省では、インフルエンザ、性感染症、その他感染症、予防接種全般についての相談窓口を設けています。

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kumo

他も見てみたいという気持ちから特養、有料、ショート、デイ、訪問入浴で働いてきました。 特養では介護職として、デイサービスでは立ち上げから運営、そして現在は都内の施設で現場もこなす生活相談員として働いています。 自分の家族介護と介護士としての介護の経験が少しでも介護に悩む方の力になれたらと願っています。
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