厚生労働省の資料で見る「介護と事故」

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利用者の転倒や転落といった事故はもちろんのこと、介護士の腰痛や怪我といった事故は、肉体労働である介護の業界では耳にタコができるほどよく聞く話です。
また、施設系とは違い、通所系や短期系(デイサービス・ショートステイなど)では、利用者宅を行き来するといった送迎もあるため、施設の外の事故というのも忘れてはいけません。

今回の記事では、厚生労働省の資料をもとに、介護事業所における職員の事故についてを説明させていただきます。

労働災害

労働災害ですので、労働している側、つまり介護事業所の職員が対象となっています。
ここでの「社会福祉施設」というのは、介護事業や訪問介護等の在宅サービス事業も含まれます。

発生状況の推移

まず見ていただきたいのは、「社会福祉施設」労働災害発生状況の推移です。

推移

【参考:厚生労働省 社会福祉・介護事業における労働災害

そして、次は「社会福祉施設」における労働災害発生状況と 労働災害による腰痛の発生状況(年間) なのですが、社会福祉・介護事業における労働災害は、年々増加傾向であり、27年上半期(1月~6月)でも前年比 (人) 4%増となっているのです。

労働災害

【参考:厚生労働省 社会福祉・介護事業における労働災害

災害発生の発生率とその状況

以下のように、社会福祉・介護事業では雇用者も増加していますが、災害発生率も増加しています。

災害発生率

【参考:厚生労働省 社会福祉・介護事業における労働災害

また、社会福祉・介護事業における労働災害は、高齢である50歳以上の被災者が半数以上を占め、経験年数3年未満の被災者が4割以上を占めていることがわかります。

年齢別

【参考:厚生労働省 社会福祉・介護事業における労働災害

災害の事例

  • 動作の反動・無理な動作: 入浴介助中に、利用者の体を浴槽から引き上げる際、腰に負担がかかり、激痛で動けなくなった。
  • 転倒: 訪問介護のサービスのため、利用者宅の台所で昼食の準備をしていた時、足を滑らせ後ろに転倒し頭部を打ち、4日後に死亡した。
  • 墜落・転落: 街灯に取り付けられた提灯を三脚を使って撤去していたところ、バランスを崩しし、三脚ごと約3m下の地面に転落し、死亡した。

転倒災害

社会福祉・介護事業の転倒災害は、平成26年は 2,259件で全体の31%を占め、前年同期に比べ 8%増加するなど、年々大幅に増加しています。

転倒災害

【参考:厚生労働省 社会福祉・介護事業における労働災害

社会福祉・介護事業における転倒災害の特徴は 9~11時台に多く発生、50歳以上の災害が約7割、年々増加傾向ということです。
また、休業見込期間が1月以上の者が約6割と、長期の休業になるということもわかっています。

時間帯別

【参考:厚生労働省 社会福祉・介護事業における労働災害

転倒災害の防止対策

社会福祉・介護事業での転倒等災害防止の対策には、「4S活動」「KY活動」「見える化」といった危険の対処と情報共有がありますが、安全活動の推進には旗振り役である「安全推進者」の配置が不可欠です。

災害の原因を取り除く「4S活動」

4Sとは、整理・整頓・清掃・清潔のことであり、日常的活動でこれらを行うのが4S活動です。
4S活動は、労働災害の防止だけでなく、作業のしやすさ、作業の効率化も期待できます。

潜んでる危険を見つける「KY活動」

KYとは、危険(K)・予知(Y)のことであり、KY活動では、業務を開始する前に、職場にどんな危険が潜んでいるかを話し合い、「これは危ない」というポイントを「指さし呼称」で確認します。
KY活動により、うっかりや勘違いや思い込みといった、災害を招く行動を事前に防ぎます。

危険を全員に周知する「見える化」

「見える化」とは、危険を可視化して共有することであり、KY活動で発見した危険のポイントに「ステッカー」等を張り付けることで注意喚起します。
「見える化」により転倒・墜落転落などのおそれがある箇所で、慎重に行動することができます。

【参考:厚生労働省 社会福祉・介護事業における労働災害

交通労働災害

次に見ていただきたいのが、交通労働災害です。
冒頭にもお伝えした、デイサービスやショートステイ・老健といった通所系や短期系などの送迎を伴う介護サービスが主な対象となる調査結果です。

社会福祉・介護事業の交通労働災害は、平成27年上半期に156件発生しており、大雪の発生した平成26年をおいても増加傾向にあります。
また、交通労働災害による死亡者も平成27年上半期だけで12人に上っています。

転倒災害

【参考:厚生労働省 社会福祉・介護事業における労働災害

時間別

【参考:厚生労働省 社会福祉・介護事業における労働災害

交通労働災害の特徴

交通労働災害の特徴は、

  • 11時台、16時台に多く発生
  • 利用者宅への訪問途中が半数を占め(54%)、次いで利用者の送迎途中が多い。(17%)
  • 一度に3人以上の労働者が被災する重大災害も、上半期に6件発生
  • 自動車による事故は全体の半数であるが、二輪(自転車含む)によるものも4割

交通災害の例

  • 送迎バスで送迎中、カーブを曲がり切れず電柱に激突。3人負傷
  • ワゴン車で利用者を送迎中、信号のない交差点でトラックと衝突し、利用者1人死亡、運転手他労働者3人負傷
  • 軽バンで利用者を送迎中、マイクロバスに追突され、乗っていた3人負傷
  • 訪問先へ移動中、信号のない交差点で左側から進入してきた車両と衝突し、乗っていた3人負傷

交通労働災害の災害の防止対策

社会福祉・介護事業における交通労働災害防止対策では、「交通労働災害防止のためのガイドライン」に基づき、利用者の訪問や送迎・二輪車の運転など、業態に合わせた業務への対策が必要です。

走行管理

【参考:厚生労働省 社会福祉・介護事業における労働災害

まとめ

年々、事故が増えていっていることの背景には、当然のように高齢者の増加が考えられますが、それ以外にも

  • 介護士の人材不足
  • 人材不足による業務負担の増加

といったことも考えられます。
ですが、注意をすべきなのは本当に直接的な介護に関わる現場の職員だけなのでしょうか?

私個人の意見になってしまいますが、国の在宅推進や虐待のニュースなどによる高齢者とその家族の介護サービス離れ、介護報酬の低下、介護サービス事業所同士の競争の激化といったことも増加する事故と大きく影響しているのではないでしょうか?
それらは、介護事業所の運営に直接的に影響し、その結果、介護事業所側は「なにがなんでも」といったあの手この手を尽くすしかない状態となっています。

つまり、介護事業所側の生き残りをかけた手段をいとわないやり方が、高齢者の意思や思いをより自由にし、それが介護士の業務負担やストレスにつながるといった悪循環を生み出しているのです。
ストレスを抱えての仕事は良い結果を生まないばかりでなく、注意力の低下にも大きく影響し、注意力の低下は事故へと繋がります。

高齢者を大切にすることを否定するわけではありませんが、何も多くの犠牲を払ってまで高齢者を必要以上に持ち上げることをしなくても良いのではないでしょうか?

今考えなければならないことは、「介護士あってこその介護」ということであり、今後を見据えた介護士と高齢者がともに歩んでいける社会なのです。
「そんな呑気な事は言っていられない」といった事業所は多く存在すると思いますが、長期的な考えのもとでの責任こそが信頼関係の構築であり、安定的な運営に繋がるのではないでしょうか?

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kumo

他も見てみたいという気持ちから特養、有料、ショート、デイ、訪問入浴で働いてきました。 特養では介護職として、デイサービスでは立ち上げから運営、そして現在は都内の施設で現場もこなす生活相談員として働いています。 自分の家族介護と介護士としての介護の経験が少しでも介護に悩む方の力になれたらと願っています。
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