今井容疑者のまとめ と 介護業界への影響

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2016年2月15日、川崎市幸区の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で、入所者を殺害したとして元施設職員の今井隼人容疑者(23)は逮捕されました。
続々と出てくる今井容疑者の発言に、介護とは無関係の方もゾッとしたのではないでしょうか?

今回の記事では、

  • 今井容疑者の逮捕前後のまとめ
  • このニュースが介護業界へどのような影響を及ぼすのか?

この2つに関してを、できるだけ簡単に説明していきたいと思います。

今井容疑者の逮捕前後のまとめ

Sアミーユ川崎幸町と今井容疑者の逮捕までの流れを簡単に見ていきます。

  1. 2011年11月:「Sアミーユ川崎幸町」開設
  2. 2014年5月:今井容疑者が働き始める
  3. 2014年11〜12月:3件の転落死が起きる
  4. 2015年3月:男性入所者が入浴中に死亡していた
  5. 2015年5月:窃盗の容疑で今井容疑者が逮捕される
  6. 2015年6月:家族からの訴えで虐待が発覚
  7. 2015年9月7日: 神奈川県警が捜査を開始する
  8. 2015年9月25日:今井容疑者は施設側より懲戒解雇とされる
  9. 2015年12月:行政より介護報酬の3カ月間請求停止処分が下される
  10. 2016年2月:殺人の容疑で今井容疑者が逮捕される

Sアミーユってどんなところ?

Sアミーユ 川崎幸町

  • 開設:2011年11月
  • 類型:介護付き有料老人ホーム
  • 入居一時金:不要
  • 家賃:22.1万円
  • 対象:要支援1~要介護5
  • 建物:6階建
  • 居室数:80室
  • 個室面積:25.02㎡
  • 居室設備:洗面・トイレ・浴室・ミニキッチン・洗濯機スペースなど

Sアミーユの個室面積の25.02㎡という大きさは、介護付き有料老人ホームの中では18〜25㎡に属しますので一般的な広さと言えますが、浴室・ミニキッチンが付いているのには、驚かされますね。
そして、何よりも入居一時金が不要で、月額22.1万円というのは、かなり安い方なのではないでしょうか?(全ての部屋が同じ条件ではないと思いますが)

少し不思議な事故

3人の相次ぐ転落死

転落死した3人のうち、1人は6階で生活をし、残りの2人は4階で生活をしていました。

  • 6階:女性(96)
  • 4階:男性(87)女性(86)

6階の609号室に住んでいた女性は、自室から離れた601号室のベランダから裏庭へ転落し、4階から転落した残りの2人もベランダから同じ裏庭に転落していました。
4階に住む87歳の男性は、施設の裏庭に倒れているところを今井容疑者によって発見されました。

暴行で元職員3人を送検

2015年の6月、Sアミーユに入所する86歳の女性の長男が、室内に隠したカメラで暴行などの様子を撮影し、虐待が発覚します。

今井容疑者の発言

神奈川県警が捜査を開始した翌日

  • 「素直にショックだし、介護職員としてつらい。これが事件だとは考えたくない」
  • 「車いすを使わなくても歩ける人たちだったが、簡単には(高さ約1.2mのベランダを)乗り越えられないと思った」
  • 「(こういった事案を)引いてしまう所が自分にはあったのだろうか」
  • 「窃盗容疑の件があって疑われているが、(転落が)事件だった場合、直接的に何かしたことは誓ってない」

【参考:2015年9月 産経ニュース

逮捕された窃盗事件の公判

  •  「見えを張りたいとの思いがあった。金や物を盗ることに抵抗はなかった」

【参考:2016年2月 産経ニュース

逮捕後

  • 「ベランダで丑沢さん(86歳の男性)と2人だった」
  • 「(丑沢さんが)部屋の中にいなかったので、あちこち探し回ったが、見つからなかった。『まさか』と思ってベランダから下をのぞいたら倒れている人影が見えた」
殺害を認めた後

今井容疑者は、母親の説得で殺害認めました。

  • 「殺そうと思ってやった」
  • 「むしゃくしゃして投げ飛ばした」
  • 「静かにせずいらだった」
  • 「申し訳ない」
  • 「見えづらい場所に落とした」
  • 「入所者の言動に腹が立った」
  • 「別の職員が見回りを終えたのを確認してから部屋へ行った」

【参考:2016年2月 産経ニュース

施設の今後

Sアミーユは、行政より介護報酬の3カ月間請求停止処分が下されることが決まりました。
指定取り消しは免れたものの、3カ月間の介護報酬の請求停止はかなり厳しいと思われます。
介護報酬の請求停止とは、簡単にいってしまえば、3カ月分の収益を停止されてしまうということです。
また、同施設に住む利用者家族からの退所もあると考えると、存続の危機に面しているのは間違いないでしょう。
今井容疑者の明らかな過失が認められますが、施設側も損害賠償の責任を負うことになるのでしょうか?

介護業界に与える影響

今井容疑者の今回の件で、過酷な介護の現状が浮き彫りにされました。

過酷な介護の現状

夜勤について

日本医療労働組合連合会が全国143の介護施設を対象にした平成27年の調査では、124施設が日勤と夜勤の2交代制をとり、約56%にあたる80施設が「夜勤時間が16時間以上」と回答。施設によっては夜勤が月12日に及び、多くが1人体制をとっていた。

【参考:2016年2月 産経ニュース

虐待について

平成26年度の職員による虐待の確認は300件と過去最多を記録した。
身体的虐待と心理的虐待が大半を占め、被害を受けた高齢者の77.3%に認知症があった。

【参考:2016年2月 産経ニュース

人手不足について

神奈川県が公開する介護サービス情報によると、26年度は退職者21人に対し、採用は18人。

【参考:2016年2月 産経ニュース

私が思うこと

結局は、人手不足ということです。
そのため、相応の負担がかかるということです。
人手不足の影響は、職員のストレスに直接的に影響します。
「こんなんじゃいかんよ」と思っている方も多くいるとは思いますが、正直な所、人手不足はどこの施設でもほとんど変わらない状況であり、どこの施設でも手を焼いていると思います。

今井容疑者に関しては、「そんな奴を採用した方も悪い」と思う方もいるとは思いますが、人手不足の状況では、人を選ぶことさえも難しくなります。
「いてもいなくても変わらない」という職員は、どこにでもいますが、いないよりかはいた方が良いときもあります。

家族の意見

産経ニュースの中に、Sアミーユの入所者の家族のコメントがありました。

  • 「施設の男性職員が来ると、怖がったり、嫌がったりすることがあった。暗い感じだった」
  • 「施設側には人質を取られている感じ。文句を言うと何をされるか分からないという弱みがあるから、あまり強く言えない。新しい場所に入所するときには、部屋にカメラを設置しようと思っている」

Sアミーユ事件の影響

今回の事件で、「施設」のイメージは、悪い印象にになったと思います。
有料老人ホームであれ、老健であれ、特養であれ、介護を知らない方からすれば、どれも「施設」です。

有料老人ホームとデイサービスは、「介護」の概念を良い意味で壊した印象があります。
その有料老人ホームで起きてしまったというのが、今回の鍵です。

有料老人ホームに「虐待はない」という話ではなく、有料老人ホームは「尊厳とお金が比例している」の典型だったので、今回の事件は少しショックでした。

今後の介護業界への影響は?

あたりまえのことに思うかもしれませんが、虐待のニュースが、流れれば流れるほど、「自分の家族を他人に見てもらう」ことに対し、疑いを持つようになります。

認知症の方の発言や表情が一時の生理的なものではなく、過去を探るためのヒントとして捉えられるようになったり、最初から疑いを持って利用を検討しに来るような家族の見学などが増えたり、カメラ設置が謳い文句の施設が出てきたりするかもしれません。

今は簡単に録画ができ、内部か外部からも世間に報告できてしまう時代です。
家族からは、何かと疑われるようになり、カメラの設置が続々と行われ、介護職員を徹底的に監視することが、家族の安心となる日も遠くはなさそうです。

世の中から「自分の家族を他人に見てもらう」ことに今以上の疑いを持たれるのです。

ですが、残念なことに、今回のような事件がなければ、介護報酬・人手不足はなかなか改善されないのも事実だと思います。
また、捉え方を変えれば、「在宅推進」のしわ寄せなのではないでしょうか?

「介護士を録画監視する」というのを、「それも介護」としてしまうなら、家族としては目に見える安心を得られるかもしれませんが、それは同時に自然な介護を失うことであり、介護士の人手不足を促すことにつながると思います。

食事・入浴・排泄介助、これからは監視されるかもしれませんね。

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kumo

他も見てみたいという気持ちから特養、有料、ショート、デイ、訪問入浴で働いてきました。 特養では介護職として、デイサービスでは立ち上げから運営、そして現在は都内の施設で現場もこなす生活相談員として働いています。 自分の家族介護と介護士としての介護の経験が少しでも介護に悩む方の力になれたらと願っています。
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