訪問介護の内容とポイント

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訪問介護

例題

45歳の娘ヨシコさんと一緒に暮らす70歳の母トシさんはこのところ物忘れがひどく、この間は夕方過ぎになって警察の方に連れられて帰宅した。
ヨシコさんは自分の仕事の関係上、毎日、毎時間トシさんを見ることはできないので介護サービスを利用しようと考えている。

一応、前回の記事「介護サービスの種類」の簡単なおさらいをしておくと、トシさんが要介護、要支援と認定された後はケアマネージャーとケアプランを作成し、トシさんに合った介護サービスを利用していく、そして利用する介護サービスは大きく4つに分けられるということです。

  • 自宅で利用するサービス
  • 自宅から通って利用するサービス
  • 生活の場を自宅から移して利用するサービス
  • 生活環境を整えるためのその他のサービス

以上がその大きく分けた4つの介護サービスで、ここからはその介護サービスの具体的な内容とポイントを説明していきます。

第一回目は自宅で利用する訪問型サービスの訪問介護です。

訪問介護、簡単に説明すると?

  • 住み慣れた自宅で受けられる
  • ヘルパーさんが身の回りの世話(生活介護)から着替えやおむつ交換などの身体介護までしてくれる

ざっくりとはしてますが、これが訪問介護の簡単な説明です。

対象となるのは?

要支援1以上か要介護1以上の方。

要支援であればその名は介護予防訪問介護となり、要介護であれば訪問介護となりますが、サービスの内容はほとんど同じです。

※要支援の場合、「身体介護」「生活援助」の区分はありません。
  また、通院などの乗降は利用はできません。

具体的には?

では、訪問介護は具体的にどういった介護サービスなのかを見ていきましょう。
ここでは正しい定義を知るために厚生労働省のホームページの定義を参考にさせていただきます。

生活介護

介護の仕事に携わっているものであれば、生活介護という言葉を使いますが、厚生労働省の定義では「家事援助」という区分になります。

家事援助とは、

  1. 身体介護以外の訪問介護であって、掃除、洗濯、調理などの日常生活の援助(そのために必要な一連の行為を含む)であり、
  2. 利用者が単身、家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるもの
家事援助サービスの種類
掃除
洗濯
ベッドメイク
衣服の整理・被服の補修
一般的な調理、配下膳
買い物・薬の受け取り

身体介護

身体介護とは、

  1. 利用者の身体に直接接触して行う介助サービス(そのために必要となる準備、後かたづけ等の一連の行為を含む)
  2. 利用者の日常生活動作能力(ADL)や意欲の向上のために利用者と共に行う自立支援のためのサービス
  3. その他専門的知識・技術(介護を要する状態となった要因である心身の障害や疾病等に伴って必要となる特段の専門的配慮)をもって行う利用者の日常生活上・社会生活上のためのサービス
身体介護サービスの種類
排泄介助、食事介助、特段の専門的配慮をもって行う調理
清拭(全身清拭)、部分浴、全身浴、洗面等、身体整容、更衣介助
体位変換、移乗・移動介助、通院・外出介助
起床・就寝介助
服薬介助

訪問介護ではできないこと

訪問介護は家事代行とは違います。

  • トシさん本人、トシさんが利用する物、トシさんの生活する場所以外のための家事(トシさん以外の部屋の掃除、来客への対応、自家用車の洗車など)
  • トシさんの日常生活の援助に該当しないもの(庭の雑草むしり、飼っているペットの世話など)
  • 日常的に行われる家事の範囲を超える行為(おせち料理の準備や大掃除などの普段以上の手間をかけてするもの)

医療行為はできません。

ヘルパーによる医療行為は認められていません。
ただし、平成24年4月から一定の要件を満たしている介護職員等による痰の吸引、経管栄養の処置が認められるようになりました。
(医師の指示に基づくものですので、担当のケアマネには必ず相談してください。)

訪問介護を利用するためには?

以前の記事「もうそろそろ介護がひつようかも、そう思ったら」でお伝えしたように、介護保険を利用する要介護者としての要介護認定が必要になります。
(要支援の方は「介護予防訪問介護」という名前ですが、サービスの内容は同じだと思ってください)

というのが、一般的な説明だとは思いますが、「この方で要介護5なの?」や「この方で要介護2はおかしくない?」といったように、東京であれば区によって認定の度合いにかなりの違いがあるのが実情で、中には介護を受けたいのに要介護認定してもらえなかったという方も当然います。

訪問介護は何も要介護認定された方だけしか使えないというわけではありません。

ただ、要介護認定されていなければ介護保険を使うことはできないため、介護保険を使えば一割負担だったところを全額負担しなければならなりません。

訪問介護のメリットとデメリット

メリット

  1. 住み慣れた我が家で介護サービスが受けられる
  2. ヘルパーさんという話し相手ができる
  3. 施設に入所するよりも費用が掛からない
  4. 必要に応じてサービスの内容を変えられる

メリットの説明

1.  訪問介護のメリットは何と言っても「住み慣れた我が家での生活」ができるということではないでしょうか?
どんな方も同じだと思いますが、やはり知らない人との共同生活よりも住み慣れた自宅のほうが気兼ねなくいられます。
「できるだけ自宅で生活したい」そういった思いを形にするのが訪問介護です。
ヨシコさんとしては、自宅でのんびりばかりしていたら「どんどんと体が弱っていくのでは?」「どんどんと面倒臭がりになるのでは?」「自分でしなきゃという意欲が失われていくのでは?」といった心配を抱くかもしれませんが、自宅で受けられる介護サービスはいくつも存在します。(記事:介護サービスの種類

2.  住み慣れた自宅にヘルパーさんという話し相手が来てくれるのもとても大きなことで、それを楽しみにされている方も多くいます。
それによって少しだけでも悩みが解消され少しでも明るくなるようなら、ヨシコさんの介護負担も少しは軽くなるのではないでしょうか?

3.  居住費や日常生活費がかからないという点でも明らかですが、サービスとしても時間単位なので負担がかからないように色々と工夫ができるのも大きな点です。

4.  前述の「具体的には?」で述べたサービスをトシさんの状態やその変化に合わせて変えていけるのは、訪問介護ならではの個別対応ではないでしょうか?

デメリット

  1. 自宅を自宅での生活を考えるとリフォーム費などがかかる
  2. 施設に入所するよりも自宅での生活の方が寝たきりになりやすい
  3. 結局、家族への負担はある
  4. 引きこもりになりやすい

デメリットの説明

1.   介護の仕事をしているとわかるのですが、やはり安全を考えると「手すり」「段差をなくす」「ポータブルトイレの設置」などはいずれ生活の前提となってきます。
そのためのリフォーム、介護用品の購入は思いのほか高価なのに「買ったら買ったで使ってくれない」なんてことも本当に多く耳にします。
いずれにせよ、自宅での生活を続けるのであれば最低限の費用はかかると思っていて間違いないと思います。

2.   施設では決められた時間に「起床」「食事」「入浴」などがありますが、ヘルパーさんがいない時であればゆっくりと休むこともできてしまいます。
結果、ベッド上、トイレでの失禁が増えたり転倒が増えたりといったことも実際に見ていると本当に多いのが現状です。

3.   訪問介護はあくまで訪問ですので、ずっと一緒にいるわけではありません。
ヘルパーさんがいないときの介護負担はトシさんの衰え共に増加していくのはやはり避けられません。

4.   トシさんご本人も、やはり「転んで骨折したくない」「病院での生活はしたくない」など考えていると思います。
安全、自分優先の生活、それは結果的に「引きこもり」につながります。
私の経験では、こういったケースは本当に多いです。

その金額は?

下記はわかりやすくしたものなので、だいたいの目安として参考にしてください。

身体介護 20分未満 170円
20分以上30分未満 260円
30分以上1時間未満 400円
1時間以上 580円に30分増すごとに+80円
家事援助 20分以上45分未満 190円
45分以上 230円
通院等の乗り降りの介助 100円

※1単位10円として計算し、わかりやすくするために一の位は切り捨てています。
※「サービスを提供する事業所」「所在地」「サービスの種類」「サービス利用世帯の所得等」に応じて異なります。

詳しくはお住いになっている市区町村の窓口までお問い合わせ下さい。

介護士からのポイント

ポイント1

ご本人(介護サービスを受ける方、ここではトシさん)がまだしっかりとしているうちは、施設に入れたりといったことは家族であればなかなかできないと思います。

それを補うのが訪問サービスですが、結果的に「ひきこもり」になってしまうケースは本当に多いのが現実です。
また、ポータブルトイレなどを購入しても使ってくれなかったりもよく聞きます。

家にいるうちは安全のための手すりを設置したりなどのリフォーム代も馬鹿になりませんが、施設に入ってしまえばそれらも使わなくなりいずれ邪魔になってしまうということも考えられます。

家族としては、そういった費用はできるだけ安く抑えたいのではないでしょうか?

  • 福祉用具貸与
  • 福祉用具販売
  • 住宅改修

介護保険で以上の生活環境を整えるためのサービスがあります。

ポイント2

また、最近では訪問介護も変化してきており、介護サービス以外のオプションを設けている訪問介護事業所もありますので、ケアマネに勧められたからといってすぐに契約をするのではなく、幾つかの訪問介護事業所のパンフレットなどを参考に見てみることをお勧めします。

そのオプションの幾つかを紹介させていただきます。

家事援助として

買い物や薬の受け取り、洗濯や布団干しや衣類の補修、来客の対応、掃除、献立作りと調理、 草むしり、犬の散歩 など

身体介護として

病院内の介助、通院の介助、車椅子の介助、外出の付添や見守り、話し相手 など

私のお勧めとしてはやはり「外出の付添」オプションです。
「引きこもり」対策としても、季節を知るという意味でもとっても生きがいを感じるサービスだと思っています。

ポイント3

介護保険サービスでは「枝切り」「散髪」などは原則できませんが、各地域の社協などではそれを補うようなサービスも存在しているので、それらをうまく利用することで出費を抑えることができると思います。

今回は私の住む世田谷区を例に紹介させていただきます。

ふれあいサービス事業

これは日常生活にお困りの方を地域で支援する「住民同士の支えあい活動」で、サービスを提供する会員を有償ボランティアとしています。(あくまでボランティアですので、その方のできる範囲での活動であるため、緊急や専門性の高い依頼等には対応していません)

以下がサービスの内容です。

  • 家事援助サービス
  • 理美容サービス
  • 大掃除・草むしり枝切りサービス
  • ゴミ出しサービス
  • 食事サービス

ご利用は各地域社協事務所にお申込みください。

あんしん事業

こちらは簡単に説明をすると、福祉サービスに関する相談を受けたり、金銭の管理をお任せするサービスです。

対象になるのは判断能力が十分でない、または生活の不安のある高齢者や障害のある方で、定期的に自宅を訪問してくれます。

シルバー人材センター

こちらは簡単に説明をすると、65歳以上、または高齢者世帯であれば利用できる「ちょっとした何でも屋さん」です。

以下がサービスの内容です。

  • ゴミ出し
  • 買い物
  • 家具の組み立てや解体、移動
  • 電球の交換 など

まとめ

上記の「ふれあいサービス事業」「あんしん事業」は世田谷区の社協事務所で申し込むサービスですが、「シルバー人材センター」は都道府県知事の許可を受けた社団法人です。

(今回は世田谷区で説明しましたが、品川区には「徘徊高齢者探索システム」など、その市区町村でも違いがあります。)

どちらも介護サービスを補たんするサービスですが、最近ではそこに民間の会社も参入しています。

介護施設ではそういった民間の会社に理美容の依頼をすることが多くあります。
それは民間ならではの価格競争があるため、より安い金額で介護保険以外のサービスを利用者に提供できるからです。

もし「できるだけ安く」というのを考えているのであれば、そのサービスを提供している民間の業者をネットなどで探してみるのも一つかもしれません。

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kumo

他も見てみたいという気持ちから特養、有料、ショート、デイ、訪問入浴で働いてきました。 特養では介護職として、デイサービスでは立ち上げから運営、そして現在は都内の施設で現場もこなす生活相談員として働いています。 自分の家族介護と介護士としての介護の経験が少しでも介護に悩む方の力になれたらと願っています。
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