訪問入浴の内容とポイント

シェアする

訪問入浴

介護サービスの種類」という記事では介護サービスの種類を説明させていただきました。

それでは、それぞれの介護サービスの内容とポイントをご説明していきます。

それぞれの介護サービスの内容とポイント、第5回目は「訪問入浴介護」です。

訪問入浴は、私が介護の世界に足を踏み入れた最初の介護サービスでした。

訪問入浴介護、簡単に説明すると?

それでは例によってまずは厚生労働省の介護保険の解説 -サービス編 –から定義を見ていきたいと思います。

訪問入浴介護は居宅を訪問し、持参した浴槽によって行われる入浴の介護をいいます。

これを簡単に説明すると、看護師1名・介護職員2名を基本とするスタッフが利用者の家に浴槽を持って伺って入浴の介助を行うというサービスです。

訪問入浴介護
分類居宅サービス
監督・指導都道府県
対象要支護1以上(介護予防)
要介護1以上
利用する場所自宅
別名訪問入浴

具体的な内容は?

訪問入浴は三人一組という点、浴槽を持って伺うという点で他の介護サービスの中でもかなり異質な介護サービスと言えます。

具体的な内容は職員の目線で説明していきます。

  1. 利用者の自宅へ伺う
  2. 湯船を組み立ててお湯をためる
  3. 利用者の入浴前の健康状態を確認する
  4. 利用者が衣類を脱ぐのを介助する
  5. 利用者を湯船の方に移す
  6. 利用者の体を洗っていく
  7. 利用者の体を湯船に浸からせていく
  8. 利用者に上がり湯をかける
  9. 利用者をベッドなどに移す
  10. 利用者が衣類を着るのを介助する
  11. 入浴後の体調の変化を確認する
  12. 次の利用者のもとへ向かう

簡単に説明するとこういった流れになっています。

職員の目線での言葉使いにちょっとムムッとなった方もいるかとは思いますので、この後の「あれってどうなってるの?」で説明させていただきます。

所要時間は?

利用者の自宅に到着し、訪問してから入浴業務を終えるまでにだいたい1時間が目安だと思いますが、その利用者の自宅の立地条件や建物の構造によってだいぶ時間に差が出てきます。

例えば、

  • 細い道の行き止まりに利用者の自宅がある
  • 7階建ての7階に住んでいるがエレベーターがない
  • 自宅の中に浴槽を設置するスペースを作る際に家具などの移動もしなければならない

など様々なケースがあります。

また、1日9時間の営業時間で回れる利用者の人数は平均で5~7人くらいでした。

これはやはり準備の時間や移動時間が大きく関係しており、私が働いていた事業所では、3つのグループに分かれて効率良く利用者の家を回れるようなコースで移動していました。

その日その日によっても全然違うのですが、だいたい次の利用者の自宅まで15分、利用者の自宅に到着してからその利用者の自宅を出るまでで1時間弱といったところです。

その日その日によって違う理由には主に以下の2つが挙げられます。

  • 道路の混雑状況
  • 利用者の体調や身体機能

どんな家でも大丈夫なの?

私が訪問入浴で働いていた時に無理だった家というのはありませんでした。

しかし、二階までの階段がハシゴだった家、物音ひとつ立ててはいけないという決まりがあった家など大変だった家はいくつもありました。

訪問入浴の浴槽は1人入ってくらいなのでスペースとしては畳1畳ほどあれば大丈夫なのですが、看護職員と介護職員の合計3名のスペース、タオルやその他の道具のスペースなどを考えるとやはり畳2畳分は必要となってきます。

あれってどうなってるの?

あの浴槽にどうやって‥‥など、ご存知ない方のために訪問入浴のツールについて説明していきます。

浴槽について

浴槽の構造

まず、あの浴槽は真ん中で二つに分解ができ、うまいこと重ねることが出来ます。

もちろん接合の部分にはゴムのパッキンが付いてますので水が漏れるなんてことはありません。

給水と排水

浴槽には2つの穴が開いており、ひとつは給水用、もうひとつ排水用となってます。

利用者はどうやって湯船に浸かるの?

準備の段階で湯船にお湯が溜まったら、浴槽のふちに鉄製の枠を取り付け、そこに大きなネットをセットします。

つまり、利用者をそのネットの上で最初に体を洗い、洗い終えたらそのネットをゆっくりと湯船に下ろしていくのです。

その時に使うのが浴槽のふちに取り付けた鉄製の枠で、取り付けられたハンドルをクルクルと回すとネット全体がゆっくりと湯船に浸かるように下がっていくといった仕組みです。

お湯の行方

どこからお湯を汲んで、どこにお湯を捨てているかってちょっと気になりませんか?

湯船にお湯をためる時

お湯のためかたには2通りのやり方があります。

  1. 訪問入浴の車からお湯をひく
  2. 利用者宅の湯船からお湯をひく
  1. についてはこの後の「車について」で説明します。
  2. の場合、まず利用者宅にある湯船にお湯をはり、専用の機械を使って訪問入浴用の湯船      へとお湯を移動させます。お風呂のお湯を再利用する洗濯機と同じ感じです。

湯船のお湯を抜く時

湯船のお湯を抜く時は基本的には利用者宅のお風呂場へ流します。

車について

看護師1人、介護士2人の合計3人でも、あの大きなバンにのると窮屈に感じるほど中には色々なものが積まれています。

  • 給水用の大きなタンク
  • ホース類
  • その他

主には以上の3つで、最も場所をとっているのが貯水用の大きなタンクで、訪問入浴の車を象徴する煙突はその大きなタンクへとつながっています。

そのタンクにどのくらいの水が入るのかはわかりませんが、ただの貯水タンクではなく温度も設定できるちょっとした優れものです。

では、そのタンクにはどうやってお湯をためるのか?ということになりますが、それは利用者の家の水道からホースで給水する仕組みになってます。

つまり、利用者宅の台所などから車のタンクに水をひき、その水を温めて利用者の待つ浴槽へと流します。
そして最後にそのお湯を利用者宅のお風呂場へと捨てます。

訪問入浴の対象は?

要介護1以上であれば訪問介護としてサービスを受けられ、要支援1以上であれば予防訪問介護としてサービスを受けられます。

訪問入浴介護と介護予防訪問入浴介護の違い

訪問入浴介護と介護予防訪問入浴介護の違いには以下の3つが挙げられます。

  • 金額
  • 環境
  • 対応

まず、金額ですが、こちらはこの後の「訪問入浴介護の利用料の目安」で説明していきます。

次は環境ですが、介護予防訪問入浴介護のみ指定があります。
指定の内容は「居宅に浴室がない場合」「感染症などの理由からその他の施設における浴室の利用が困難な場合」などに限定した入浴介護となっています。

そして対応ですが、やはり介護予防なので要介護状態にならないという意味でも利用者本人にできることをしていただくことになってます。

メリットとデメリット

メリット

利用者の自宅で入浴

もっとも居心地の良い自宅で入浴できるというのは訪問入浴の最大のメリットだと思います。

要介護状態で自宅での生活を続けるとなるとやはり問題になるのは入浴ではないでしょうか?

もし、施設に入ってしまえば他の利用者と一緒の入浴となり、デイサービスなどであれば場合によっては民家改装型であったりもするので、設備的にもやはり危険が伴ってしまいます。

また、訪問入浴を利用されるのが気遣いをする方であれば家族がそばにいるというのはやはり心強いのではないでしょうか?

入浴の効果と衛生

入浴し体を清潔に保つことによって、感染症の予防だけでなく、かゆみや床ずれなどの皮膚トラブルの対策としても効果があります。

そしてお風呂でお腹を温めることで便が出やすくなる方が多くいるのも事実です。

また、何より心までさっぱりするというのはとても大きいことだと思います。

2人の介護士と1人の看護師

合計3人のスタッフがいるというのはとても心強いことだと思います。

中でも看護師が1人いるということは大きいのではないでしょうか?

健康状態を観るにしても、ボディチェックをするにしても専門的な知識がある者が来てくれるというのはやはり安心につながります。

そして、入浴した後に薬を塗ったり、パンツなどを履き替えたり、着替えをしたりというのも慣れたスタッフが3人いることであっという間に終わってしまいます。

デメリット

離職率の高さと派遣社員

私が働いていた訪問入浴の事業所の離職率はとても高いものでした。

離職率の高さの原因として、介護業界の中でも訪問入浴は低賃金であり、サービス残業が多いことが考えられます。

そこを辿っていくと介護業界全体が抱える介護報酬と経費の関係といったちょっとややこしい問題に行き着いてしまうので、これはまた別の機会にお話ししますが、この離職率の高さが与える影響はやはり利用する側と利用される側との情報の伝達に幾つかの障害を生むことになりかねないということです。

さらに、私が働いていた訪問入浴の看護師は3分の2が派遣社員だったため、よくご家族からは「あらまた職員さん変わったのね」と言われることも度々ありました。

ただ、毎回裸になる利用者の羞恥心に対しては業界の事情関係なく配慮をしておきたいところだと思います。

交通状況による遅刻

これは都内などに限定されていることなのかもしれませんが、その日によって交通状況に差があるため、利用者のお宅へ予定通りに到着できないといったことは度々ありました。

看護師による医療行為

訪問入浴を仕事にしたことがあれば、一度は耳にしたことのある看護師の医療行為について。

訪問入浴には1人の看護師がいますが、その看護師の訪問入浴における業務は健康状態のチェックと入浴の可否となっています。

つまり、訪問入浴で看護師は医療行為をしてはならないのです。

入浴後の褥瘡の処置も吸引も認められていないのです。

水漏れのリスク

私が訪問入浴をしていた時、台所からひいていた給水ホースの隙間から水が漏れて床が水浸しになっていたことがありました。

これを先輩の職員に伝えたところ「私なんてそのまま下の階まで水浸しにしちゃって、下の階の住人に怒られたことあったよ」といっていました。

こういったことは滅多にあるものではありませんが、やはり水漏れのリスクがどこかに潜んでいるというのは正直あるかと思います。

訪問入浴介護の利用料の目安

こちらの表は厚生労働省のどんなサービスがあるの? – 訪問入浴介護を参考にさせていただきました。

介護度サービス費用の設定利用者負担(1割)
要支援1・2全身入浴の場合834円(1回につき)
部分浴の場合584円(1回につき)
要介護1~5全身入浴の場合1,234円(1回につき)
部分浴の場合864円(1回につき)

※上記の表はあくまで目安ですので、詳しくは市町村・東京都では23区の特別区の窓口までお問い合わせ下さい。

まとめ

「以前は好きだったのに」というご家族の言葉は訪問入浴に限らず度々耳にします。

高齢に伴い、身体の状況や精神的な変化により入浴が面倒に思えるようになるというのはよくあることかと思いますが、そこに手を差し伸べられるのが訪問入浴であり、介護保険の中でも痒いところに手が届くサービスだと思います。

The following two tabs change content below.

kumo

他も見てみたいという気持ちから特養、有料、ショート、デイ、訪問入浴で働いてきました。 特養では介護職として、デイサービスでは立ち上げから運営、そして現在は都内の施設で現場もこなす生活相談員として働いています。 自分の家族介護と介護士としての介護の経験が少しでも介護に悩む方の力になれたらと願っています。
スポンサーリンク

シェアする

フォローする