高齢者への虐待 厚生省の調査結果

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家族からの虐待

前回の記事「高齢者への虐待 その壱」では、虐待の種類と程度の説明をさせていただきました。

今回の「その弐」では「厚生省 平成25年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」を説明させていただきます。

今回は長くなってしまいそうだったので、できるだけシンプルにまとめてみました。

高齢者虐待の調査結果

まず、用語の説明からさせていただきます。

  • 養介護施設従事者等:介護老人福祉施設など養介護施設又は居宅サービス事業など養介護事業の業務に従事する者
  • 養護者:高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等
  • 虐待判断件数:調査対象年度(平成25年4月1日から26年3月31日)に市町村等が虐待と判断した件数
  • 相談・通報件数:調査対象年度(同上)に市町村が相談・通報を受理した件数

平成25年高齢者虐待の調査の全体像

高齢者が虐待の調査結果(全体像)
養介護施設従事者等によるもの養護者によるもの
待判断件数相談・通報件数虐待判断件数相談・通報件数
25年度221件962件 15,731件 25,310件
24年度155件736件15,202件23,843件

ここからは養介護施設従事者等の虐待に関しての調査を説明していきます。

養介護施設従事者等による高齢者虐待

養介護施設従事者等による高齢者虐待の
相談・通報件数と虐待判断件数の推移
平成20年21年22年23年24年25年
相談・通報件数451408506687736962
虐待判断件数707696151155221

表からもわかるとおり、養介護施設従事者等による高齢者虐待の 相談・通報件数と虐待判断件数は年々増加し、養護者による高齢者虐待の相談・通報件数と 虐待判断件数もまた増加傾向にあります。

相談・通報者

相談・通報者 1,154 人のうち、

  1. 「当該施設職員」が 403 人(34.9%)
  2. 「家族・ 親族」が 221 人(19.2%)

虐待の発生要因

  1. 「教育・知識・介護技術等に関する問題」が 128 件(66.3%)
  2. 「職員のストレスや感情コントロールの問題」51 件(26.4%)
  3. 「虐待を助長する組織 風土や職員間の関係性の悪さ」25 件(13.0%)

虐待の事実が認められた施設・事業所の種別

  1. 「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」が 69 件(31.2%)
  2. 「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」34 件(15.4%)
  3. 「介護老人保健 施設」26 件(11.8%)
  4. 「有料老人ホーム」26 件(11.8%)

虐待の内容

被虐待高齢者の総数 402 人のうち、

  1. 「身体的虐待」が 258 人(64.2%
  2. 「心理的虐待」132 人(32.8%)
  3. 「介護等放棄」67 人(16.7%)
身体拘束

虐待を受けた高齢者のうち、「身体拘束あり」は 92 人(22.9%)

虐待の程度

虐待の程度の割合では、5段階評価(5がもっとも重い)

  1. 「1-生命・身体・生活 への影響や本人意思の無視等」が 213 人(53.0%)
  2. 「2-生命・ 身体・生活に関する重大な危険」は 22 人(5.5%)

虐待による被虐待高齢者の死亡事例はないようです。

被虐待高齢者の状況

被虐待高齢者は、総数 402 人のうち、

女性が 290 人(72.1%)を占め、年齢は

  1. 80~84 歳が 104 人(26.7%)
  2. 90 歳以上が 94 人(24.2%)
  3. 85~89 歳が 93 人(23.9%)

また、要介護度は3以上が 314 人(78.1%)を占めていました。

認知症との関係

入所系施設における被虐待高齢者の認知症の程度と虐待の種別の関係をみると、 被虐待者に認知症がある場合では、認知症がもっとも重い状態、次に重い状態の場合、身体的虐待を受ける割合が特に高いようです。(日常生活自立度Ⅳ)・M))

施設種別ごとの虐待種別は、

  • 「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)・小規模多機能型居宅介護等」では「身体的虐待」が含まれるケースが他の施設種別よりも低い。
  • 「その他入所系」では「介護等放棄」が含まれるケースの割合が他の施設 種別よりも高い
  • 居宅系の事業所では「経済的虐待」が含まれるケースが他の施設種別よりも高い。

虐待を行った養介護施設従事者等(虐待者)の状況

虐待者の総数 282 人のうち、不明を除くと、

  1. 30 歳未満が 62 人(26.5%)
  2. 40~49 歳が 50 人(21.4%)
  3. 50~59 歳が 49 人(20.9%)
  4. 30~39 歳が 47 人(20.1%)

職種は「介護職」が 213 人(78.3%)

虐待者の性別は、不明を除くと

  1. 「男性」141 人(51.8%)
  2. 「女性」131 人(48.2%)

ちなみに介護従事者全体(介護労働実態調査)に占める男性の割合は 21.4%です。

また調査の結果、虐待者は男性、女性ともに「30 歳未満」の割合が高いようです。

養護者による高齢者虐待

相談・通報者

相談・通報者 28,144 人のうち

  1. 「介護支援専門員」が 8,795 人(31.3%)
  2. 「警察」3,488 人(12.4%)
  3. 「家族・親族」3,245 人(11.5%)

虐待の発生要因

  1. 「虐待者の介護疲れ・介護ストレス」が 1,398 件(25.5%)
  2. 「虐待者の 障害・疾病」1,221 件(22.2%)
  3. 「家庭における経済的困窮(経済的問題)」925 件(16.8%)

虐待の内容

養護者による被虐待高齢者の総数 16,140 人のうち、虐待の種別では、

  1. 「身体的虐待」が 10,533 人(65.3%)
  2. 「心理的虐待」6,759 人(41.9%)
  3. 「介護等放棄」3,602 人(22.3%)
  4. 「経済的虐待」3,486 人(21.6%)

虐待の程度

虐待の程度の割合では、5段階評価で(5がもっとも重い)

  1. 「3-生命・身体・生活に著しい影 響」が 5,522 人(34.2%)
  2. 「1-生命・身体・生活への影響や本 人意思の無視等」が 4,983 人(30.9%)
  3. 「5-生命・身体・ 生活に関する重大な危険」は 1,444 人(8.9%)

被虐待高齢者の状況

被虐待高齢者は、総数 16,140 人のうち、女性が 12,537 人(77.7%)

年齢
  1. 80 ~84 歳が 3,902 人(24.2%)
  2. 75~79 歳が 3,525 人(21.9%)
要介護認定の状況

認定済みが 10,980 人(68.0%)であり、要介護認定を受けた者を要介護度別に見ると、

  1. 要介護3以上が 4,435 人(40.4%)
  2. 要介護1が 2,443 人(22.2%)
  3. 要介護2が 2,352 人(21.4%)

被虐待高齢者の要介護度と虐待種別との関係では、「身体的虐待」と「心理的虐待」では、要介護度が重い方の割合が低く、「介護等放棄」ではその逆になる傾向がみられたようです。

認知症がある場合と寝たきりの場合では、認知症状・寝たきり度が重くなるほど虐待の程度も重くなるようです。

また、「介護等放棄」を受ける割合が高くなり「心理的虐待」は低くなる傾向があるようです。

虐待を行った養護者(虐待者)との同居の有無

「虐待者とのみ同居」が 7,893 人(49.0%)で最も多く、「虐待者及び他家族と同居」の 6,084 人(37.7%)を含めると、13,977 人(86.7%)が同居している事例であったようです。

 家族形態

  1. 「未婚の子と同居」が 5,276 人(32.8%)
  2. 「夫婦のみ世帯」3,133 人(19.5%)
  3. 「子夫婦と同居」2,675 人(16.6%

被虐待高齢者からみた虐待者の続柄

  1. 「息子」が 7,143 人(41.0%)
  2. 「夫」3,349 人(19.2%)
  3. 「娘」2,865 人(16.4%)

虐待への対応策

虐待事例への市町村の対応は、「被虐待高齢者の保護として虐待者からの分離」 が 7,058 人(34.3%)の事例で行われ、そのうち、分離を行った事例では、

  1. 「介護保険サービスの利用」が 2,654 人(37.6%)
  2. 「医療機関への 一時入院」が 1,203 人(17.0%)

分離していない事例では、

  1. 「養護者に 対する助言指導」が 5,712 件(51.5%)
  2. 「ケアプランの見直し」 3,264 件(29.4%)

虐待等による死亡事例

介護をしている親族による、介護をめぐって発生した事件で、被介護者が 65 歳以上、かつ虐待等により死亡に至った事例(平成 25 年度中に発生、市町村把握)は、

  1. 「養護者による殺人」12件 12人
  2. 「介護等放棄(ネグレクト)による致死」6件 6人
  3. 「虐待(ネグレクトを除く)による致死」2件 2人
  4. 「心中」1件 1人

合わせて 21件 21人あったようです。

次回の記事「高齢者への虐待に対しての私の正直な意見」では、高齢者介護施設の虐待に対する私の考えを素直に述べたいと思います。

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kumo

他も見てみたいという気持ちから特養、有料、ショート、デイ、訪問入浴で働いてきました。 特養では介護職として、デイサービスでは立ち上げから運営、そして現在は都内の施設で現場もこなす生活相談員として働いています。 自分の家族介護と介護士としての介護の経験が少しでも介護に悩む方の力になれたらと願っています。
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